クルルのおじさん 料理を楽しむ

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私の本棚

2012年の年末に地元の新聞社の取材を受けました。この時には、僕はのんびりした日向での生活に別れを告げ、名古屋生活に戻っておりました。日向時代はなんと早く終わったことか。何につけ、良い時というのは短い、少なくとも、短く感じられるもののようです。僕が勤務している会社(本社・工場)は、愛知県の碧南市にあります。僻地の「僻」ではありません、紺碧の「碧」です。大都会で忙しない名古屋とは違い、のんびりした風土です。愛知県では、昔の名前で話をする方が分かりやすい場合がありますが、碧南市は「三河」です。お隣の半田市は「尾張」です。三河尾張では気質も違うそうです。僕には、まだ、分かるような分からないような奥が深い世界です。

取材の時、業界環境・会社状況についての真面目な取材が一段落してから、読書=本の話になりました。この新聞社では、週に一回、紙面の最後に「私の本棚」という連載を設けられており、読書家の方々が今まで読んだ中で面白い本を皆さんに紹介するというコーナーです。僕が読書好きなことを知ったこの記者の方が、是非に寄稿するようにと勧めてくれました。やりたくてもなかなか機会がない話ですし、寄稿することに興味をもったのは間違いないのですが、人に紹介するほどの読書量が自分に本当にあるのか疑問に思い、ましてや、自分が面白いと思う本を人様に紹介することに自信はありませんでしたから、返答はしばし時間を頂いて、その時の取材は終了しました。

 

結局、かなり真面目に考えて、「私の本棚」の取材を引き受けることにしました。

寄稿に際しては、5冊をコメント付けて、あとの5冊はコメント無しで書名のみを記載するというものでした。合計10冊です。

 

①経営の本、②先輩(炒り豆腐の課長さんのことです。この先輩はその後有名な経営者になられていました)が出版された本、③農業・農政についての本、④日本の政治を外国人の視点から見た本、そして、⑤料理の本を紹介させて頂きました。硬い本が並ぶ中で、一冊くらいは、気楽なモノを入れようと。 

この⑤の料理の本は「辰巳芳子の展開料理」という本です。取材の記者さんが「xxさん(僕のこと)の趣味は、料理。単身生活とともに台所に。料理歴はもう7年に」と嬉しいやら恥ずかしいやら、上手いことコメントを入れてくれました。

この本は、高校時代の同級生がプレゼントしてくれたもの。僕の数少ない料理の先生(親族以外で)の一人です。僕たちの高校は大阪にありますが、結構、よく出来た高校で、また、よく出来た学年であったのか、卒業後も同期会を継続しており、地元大阪はもちろん、東京での同期会もやっている。僕が名古屋に赴任したのは2003年ですが、それを機会に名古屋にいた仲間が声をかけてくれ結集することになりました。少ないとはいえ、常時4-5人が集まり昔話に花を咲かせ、子供、いや、孫の話で盛り上がり、普段の生活・趣味の話も出るようになっていました。料理に関心を持ち始め「今日の料理」で勉強している僕に更なる刺激を与えてくれたものです。

 

辰巳芳子先生というのは、多少でも、料理・料理本をかじったことがある方は、よくご存じと思います。1924年生まれ、料理研究家・随筆家。お母さまも有名な料理の先生。お父様の介護の経験からスープに開眼。この新聞の記事が出るときには、ドキュメンタリー映画「天のしずく、辰巳芳子の”いのちのスープ”」が全国で上映されている時でした。この本は、料理本として勿論上手く構成が出来ている本で、タイトルの通り一つの料理・材料から次の料理に展開を図る=料理の幅を広げる、レシピ解説も美しい文章で綴られています。

更に素晴らしいのは、随所にこの方の生き様が綴られている。「Tシャツはきれいに着る」なんていうコラムが出てきて、マーロン・ブランドとかジェームス・ディーンの映画のシーンの話が出てくる。僕から見ても素敵なおばあちゃまで、お年を計算すると、僕の母親の一つ下のご年齢でした。この年齢になられてもTシャツをおしゃれに着ている、年をとってもこんなおばあちゃまになりたいなあと思わせる。

更に更に、「献立のたて方・・・寄せ鍋に広がる景色」というコラムでは、料理する→食べさせる→食べる、ということを、日本の食料自給率の観点から話をされており、「耕してみる→耕し仲間」をつくることを提言されている。もうこれは、料理本の範疇を超えた人生の本かと。大変に感動した本です。

 

・・・辰巳芳子の展開料理、ソニーマガジンズ、2009年10月 初版第一刷・・・

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やや自慢話ですが、この僕の「私の本棚」は、結構、好評であった由。掲載された後、僕のところにも随分といろいろな方からコメントを頂きました。嬉しかったです。書名のみを記載するところには、「スラム・ダンク」井上達彦、を入れたのですが、これにも結構反応がありました。紙面が限られているので、一世を風靡した名セリフ 「あきらめるとそこで試合終了だよ」 を入れることが出来なかったのが、今でも、大変に残念です。

 

・・・「スラムダンク」完全版、全24巻、今もちゃんと留守宅に保管してある・・・ 

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