クルルのおじさん 料理を楽しむ

先輩

僕が最初に勤めた会社は世に言う「総合商社」で、関西・繊維系、最近でも極めて存在感のある会社です。今でも個性的な方が多いと思いますが、僕の先輩にもユニークな方が沢山いらっしゃいます。その最たる方のお一人が「炒り豆腐の思い出」それから「私の本棚」の欄でも出てくる当時の課長さんです。

 

この先輩は課長であったころ「ゴルフは本を読めば上達する」という固い信念を持たれていました。「そんなアホな、本読んで上達できるんやったら世話ないわなあ」というのが僕も含め周りの反応でした。信念の人は強いのです。本を読むからには徹底して読む。「10冊、20冊ではダメだ。100冊の本を読めばゴルフの全てが分かる。100冊だぞ!」と言われても凡人の僕にはピンと来ませんでした。

 

結果を先に言いますと、後日、この方は本当にシングルプレーヤーになってしまったのです。有言実行の方ですから、確かに100冊以上のゴルフの本を読まれたのでしょう。但し、この方は会社人として最高の立場にまでなられた方ですから、お仕事の上でも沢山の回数をプレイをする環境に恵まれた。それで結果的にシングルになれたのだ、というのが専らの解釈です。

しかし、僕自身、単身生活になってからはプレイの回数だけで言えば多分負けないくらいのラウンドをこなしていると思うのですが、あいかわらず、シングルにはほど遠い状態。ついつい100冊の本の威力を信じてしまうような気持になります。「僕はそこまで本を読まなかったからかなあ」なんて弱気になってしまうわけです。冷静に考えれば、もっと妥当な理由は、単純に運動神経、練習量、上手くなろうというガッツの問題があるのでしょう。

この先輩は第一線を退かれた後も、執筆活動、講演活動を精力的にこなされています。少し前に,「これだけたくさんの本を出されたのだから、次は、ゴルフの本ですねえ」と冷やかし半分に言ったつもりが、ご本人はかなり真剣に 考えられているようでした。・・・本当に出版されたら一体誰が買うのでしょうかねえ(影の声)。

 

料理の本を読み始め、料理を自分でやるようになってから、時々、この先輩の当時の話を思い出します。「よしっ、それなら僕は料理本を沢山読んで料理の名人になろう」なんて思ったりして。今でもこのコンセプトは密かに温めているのですが、ある時、家族に話をしたら場にシラーとした鳥が飛んでいるような気配になりました。だがしかし、偏屈な天の邪鬼からすると、近年の調理器具の発達、調理インフラの大幅な改善、材料の扱い易さ、等々の技術進歩を冷静に勘案すると、あながち頭から否定されるものでは無いと思うのです。

「料理は頭で創るもの・・実技は後からついてくる・・」てなタイトルで日野原先生のようなインパクトのある方が本を出せば結構いけそうに思うのですがね。

 

これを書いている時に、何んと、僕のブログに対して初めての書き込みを拝見致しました。それも二人の方から。数行のコメントとは言え、ちゃんとした感想・ご意見・励ましの言葉で感激しました。

もともと反応を期待して書いている訳ではないはずですが、やはり、反応があるのは嬉しい。自分の予想を超えるくらいに嬉しい、気分が高揚している。

野球、サッカーのヒーロー選手がインタビューで大きな声でフアンの方々に「ありがとございまーす、応援、よろしくお願いしやーす」と言ってますが、余り好きではありません。プロがファンに迎合したらアカン。長嶋茂雄はそんな挨拶はしてなかったぞ。もっと自分に自信をもって孤高をつらぬけ、と言いたくなるのですが、何のことは無い、二人の方からメッセージを頂いただけで「宜しくお願い致します」とヘラヘラと喜んで反応している次第であります。

 

執筆活動を続けておられるこの先輩の本はベストセラーにもなっています。ほとんどが企業経営、政治経済についてですが、エッセイのような本もあり、若い時の本の読み方についての記載がありました。「傍線を引き、これっ!と思うところはノートに書き写していた」そうです。そんなノートが何冊もあり、最近、たまたま見つけて懐かしく思った由。へえー、このおっさんでもこんな工夫・努力しながらチャンと読んでいたんだ、と妙に納得、安心したのを覚えています。はい、僕も赤ペンで傍線を引きまくりながら読んでいます。書き込みも一杯してしまいます。だから読んだ本を人にお貸しするのは恥ずかしです。残念ながらノートは付けておりません。

この先輩は、ベストセラーの本を含め多くの本の印税収入を全て寄付に回されています。「名誉とカネのためではない。自分の書きたいことを書くために寄付に回すんだ、俺は読者にも迎合していないぞ」(註:これは僕の全くの独断の解釈です)との大先輩の矜持が読み取れるようで楽しいです。

昭和のおじさん世代から言うと、こういうのが COOL! かな。

 

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                ・・・・2016年10月14日、彦根城、朝7時ごろ