クルルのおじさん 料理を楽しむ

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共生微生物

年あけ風邪のためマンションで休養していた時に読んだ本の一冊です。

『あなたの体は9割が細菌-----微生物の生態系が崩れはじめた-----』

著者は、アランナ・コリンさん。イギリスのサイエンス・ライター。生物学の学士号・修士号、および、進化生物学の博士号を取得されている方。女性です。生年月日は不詳。大変に刺激的、啓蒙的な内容で、考えさせられることが多い本だと思います。是非、ご一読をお薦めします。例によってタイトルがキャッチコピー的だと思いますが、原題は『10% HUMAN』ですから、あまり原題の意から乖離することもなく上手く関心を持たせる表題になっていると思います。

 

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誤解を恐れずに内容を纏めてしまうと、「抗生物質vs腸内微生物の生態系、および、微生物の生態系を修復することについての考察・示唆」、ということだと思います。著者は自分の体験を踏まえてドンドンと話を展開します。著者の表現力・展開力が大変に面白いです。それから、翻訳本は訳される方の文章力がすごく大切だと思っているのですが、この訳者の方の力量は素晴らしいです。両方のバランスがよくて、難しい内容でありながらサスペンス的な興味を持たせてグイグイと引っ張っていきます。

NHKの人気番組にためしてガッテンというのがありますが、人気の秘密は「へえっ、そうだったのか。合点がいった。」と思わせる内容と構成になっているからと思うのですが、この本も、なるほど、と思わせるところが随所に出てきます。いくつか紹介します。

 

・最近では、花粉症、アトピー性皮膚炎、自己免疫疾患・心の病気・自閉症、等々、僕たちの回りに余りにも多くの人々がこれらの症状に苦しんでいるので、もはや、これが世の中の普通の状態と思いがちです。しかし、著者は、21世紀病という言い方で、これらは「ヒトにとり普通の状態でない、おかしい状態である」ことを厳しく問い直します。確かに、これらは「おかしい」ことなんだ、当たり前のことであるハズがないということを改めて認識させられます。

・お料理の本に、食べる人にとっての健康の観点から「あなたの体はあなたの食べたもので出来ている」という表現がされていることがよくありますが、この著者は、「あなたは、あなたの(体の中にいる)微生物が食べたもので出来ている」と表現します。微生物=細菌、ウイルス、菌類、古細菌などは、もっぱら腸を中心に僕たちの体の中に何んと100兆個が共生しているそうです。100兆個!です。

・ヒトの消化器系の構造、すなわち、大腸は微生物のホームグラウンドであり、微生物は食物繊維が大好き。虫垂は一見何の機能も果たしていないと思われた時期があったが、実は、その微生物の大切な待機場所であること等々から、ヒトは本来、肉食動物ではなく、植物を主食としてきた雑食動物であると説明します。説得力があります。改めて納得させられます。 

・マイケル・ポーランが「本物の食べ物をたべよう、食べ過ぎずに。そして、野菜中心に。」と言っているのを大変に評価しています。直感的に確信をつかんでいると。野菜は人体のバランスを良くしてくれていることが合点出来ます。野菜大好きおじさんとしては、改めて、よしよし、と思った次第です。

 (マイケル・ポーランは、1955年生れのジャーナリスト、カリフォルニア大学バークレー校の教授。『人は料理する』の著者。僕の最初の記事「料理って?」で紹介した本です。この本に彼の名前が出てきて何か古い知人に再会したような、嬉しく思いました。)

 

・最終の第8章「微生物生態系を修復する」の件は、あっと驚く方法により、予防が治療に勝るということの考察・示唆です。敢えて内容は記載しませんので、是非、ごゆっくりと読書を楽しんでください。

 

やくざ映画を見た男性の観客は映画館を出た時、ほぼ全員、自分自身が高倉健か、菅原文太の気分になっているとか。いかり肩になっていたり、眼光が鋭くなっていたり。この本を読んでいる時、僕は、自分の腸内で微生物が共生している、そして、戦っているところが目に浮かぶようでした。それから、昔、「ミクロの決死圏」、というSF映画を見たことを思い出しました。調べてみたら1966年の映画でした。秘密の技術(=物質をミクロ化する)を使って極小(ミクロ)になった主人公が患者の人体の中に入り込んで治療を行うという凄く漸進な発想のSFスパイアクション仕立てのスペクタクル映画です。この原題は「fantastic voyage]と場違いなノドカなタイトルであったことを発見しました。タイトルとしては邦画タイトルの圧倒的な勝ちだと思います。この秘密の技術があれば、そのうち、ヒトの共生微生物ともご対面が出来るんだ、弱っている微生物クンを再生・修復することも出来るだろうにと妄想しました。

 

本の面白さをうまく伝えることが出来ず忸怩たる思いです。近年、免疫力について沢山の本が出版されていますが、ヒトの体、食事と健康の分野に興味をお持ちの方には特にご一読をお薦めする一冊です。とにかく、共生微生物が100兆個です。ヒトが自前でその機能を自分のモノにするには大変なエネルギーと時間がかかるところを100兆個の共生微生物にその機能を「アウトソーシング」しているそうです。このような表現に出会えるだけでも僕は感動してしまいます。

  

風邪の薬を飲んでいるので、僕の微生物クンが弱ったのではないかと心配になりました。おじやを作って日向の平兵衛酢ポン酢で頂きました。両者ともに元気になりつつあります。

 

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 大根とニンジン入りの春の七草粥風おじや、平兵衛酢ポン酢を垂らして。・・・見かけよりも美味しく頂けました。