クルルのおじさん 料理を楽しむ

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フィッシュヘッドカレー

マレーシアに駐在して家族が来てくれるまでの単身期間中に、マレー半島を自分の車で一周しました。中国正月の休みの前、仲間と一緒に件の店でバクテを食べている時に、休みをどう過ごすかが話題になりました。今までにも駐在員のなかで何人かの人はこの休みを利用してマレー半島一周の旅をしたとのこと。「なるほど、それは良いアイデアだ。しかし、一人で車を運転してマレー半島を一周する、というのは不安がある。チョット怖いなあ」と言ったところ同席していた方が「僕で良ければ同行させてください」と言ってくれました。この方は、在シンガポールの駐在員で、あと数か月で帰国が決まっていました。駐在の最後の思い出にマレー半島巡りをやってみたかったので、僕が行くのであれば絶好の機会だから同行すると言ってくれたものです。

こういう話はトントン拍子に進むもので、バクテを食べている間に、ザックリした計画を決めました。計画と言っても、大雑把な日程を打ち合わせしただけ、あとは、運転しながら適当に考えようということを決めただけです。当時、僕はいすゞのトローパーというジープ(四輪駆動)に乗っていました。日本ではビッグホーンという名前です。四駆の中では人気車種の一つであったかと思います。もちろん、オートマテイックではなくマニュアル車です。僕たちの世代は、車の運転は間違いなくマニュアル車で覚えました。マニュアル車の運転が得意という訳ではありません。マレーシアでは日本車(セダン)の価格が大変に割高で、日本で買える値段の2-3倍はしていたと思います。四駆というのは、実務用の車種という認識がされており、税金が割安。日本に比べて、値段は高いことは高いですが、セダンに比べて相対的にはまだマシでありました。そもそも、試乗した時に四駆の力強さを実感して、マレーシアで運転するには、これくらい逞しい車が良さそうだと思ったのがトローパーを選んだ最大の理由でありました。久しぶりのマニュアル車の運転で、慣れるまでには結構苦労させられました。

 

旅行のテーマは、単純に、半島一周することなのですが、その中で①マレー半島の北東に昔の合弁事業の工場跡地があるので、そこを訪問すること。②各地で、バクテとフィッシュヘッドカレーを食べ比べること、にしました。

出発の前夜は生憎と大雨が降っていました。出発して1-2時間も経たないうちに、道路が洪水状態になっている個所に出くわしました。いったん停車。大型のローリーは何の問題も無く通過して行きます。中型のバスも恐る恐るではありますが、これも無事に通過。それを見ていた乗用車が後に続きました。途中で動けなくなりました。エンスト。回りにいた見物人に助けてもらってロープをつないだり、押したり引いたりしてもらって、漸く、脱出。

”オレのトローパーはあの乗用車よりも車高は有る、さっきの中型バスくらいは高いのでは、まあ、最悪でも見物人(多分、近くの村人)が助けてくれそうだから、挑戦しよう!”とエエ加減な判断で一歩一歩前進しました。結構、水の圧力は強いもので車ごと流されるような感覚がするくらい。しかし、四駆の力は大したもので、自力で渡り切ることが出来ました。見ていた村人からは拍手、拍手。初日から大変な冒険旅行となりました。

 

村と村、町と町の間は、ほとんど畑かジャングルです。畑は専らパームヤシの農園が広がっています。我々の会社・工場の原料となる作物です。なだらかな丘状に見渡す限りパームヤシの農園が広がっているのは壮観です。想像を逞しくすれば、映画のジュラシックパークの舞台にいるようで、次のカーブを回ったら大きな恐竜が出てきても不思議ではないような景色です。

その通り、運転中に恐竜が出てきました。イグアナ。道路を横断している。頭から尻尾の先まで2mはあると思います。車の気配を感じてからは動きが速くなりました。多分、一族の中には、肉食恐竜ならぬ大型ローリーの犠牲になったモノもかなりの数がいるのでしょう。マングローブの林のなかに消えていきました。他にも、カメ、サル、馬・ロバ、それから、ヘビ。カメは遅いですが、ヘビは速いです。空を飛ぶような勢いで、これも2-3mはありそうなヘビが道路を走り去って行きます。

マレーシアにはコブラがいます。なかでもキングコブラというのがいて、鎌首を持ち上げると人間の背丈以上になるほどとか。極稀にだそうですが、農園で働いている人が出くわすことがある。逃げようとしても人間の走る速さどころでは無いスピードで追いかけてくる。あっという間に追いつかれて噛まれればお終い。猛毒だそうです。働いている人はコブラ毒の血清を常時しているとか。くわばら、くわばら。僕はヘビ、トカゲの類は全くの不得意です。

(最近、公害問題とか動物保護とかの観点から熱帯雨林にある農園についてイロイロと議論がされています。パームヤシ農園の名誉の為に念のために書いておきますが、適切に運営されている農園は、環境に優しいものです。そして、マレーシア経済に大変な貢献をしている産業です。農園のなかには労働者従業員のための住宅、病院、学校も完備されているほどです。)

 

夕方、どこかの町に入って、その夜の泊まる場所を確保するため、ゆっくりと車を走らせていましたら、警察官に車を停止させられました。信号無視でもやってしまったか、と不安に。英語を話せない方です。僕はマレー語は全く分かりません。何か車のことで文句を言っているような。車から降りて前面にいくと、何んと車のナンバープレートが付いていませんでした。後ろのプレートは付いていました。

”何故だ?、エッ、ああ、そうか。洪水のところを渡った時に水の力で剥がされたのか?それ以外には考えられない。水の力ってのは凄いんだ”。「それでお巡りさん、どないせいと言うんですか」と聞いたところ、何やら回りにいる人(=一般人、村人)に指示しています。この時には、回りには見物人が沢山集まって車を取り囲んでいました。村人が、木の板、針金等を持って来てくれました。随分と手際よく、ペンキかマジックインキのようなもので木の板に車のナンバー詳細を書き込み、板の穴に針金を通して車体に固定してくれました。これで一件落着、無罪放免。回りからはまた拍手と歓声。「いやあ、ホンマにお前らええ奴やなあ、感謝、感謝。何かお礼をしないと日本人の名前がスタルわ」。荷物をあたると日本ブランドのペット飲料と日本から持ってきたT-シャツがあったのでそれをプレゼント。デザインが面白かったのか、大うけでした。ついでに、ホテルも紹介してもらい、充実の初日を無事にベッドで寝ることが出来ました。

 

ほぼ予定通り、三泊四日か四泊五日の、弥二さん喜多さん珍道中は無事に終了。トラブルは沢山ありましたが、事故は一切無くてなによりでした。結構ハードな工程でした。二人で交代しての運転ですが、約2000㎞走りました。テーマその①の工場跡地もチャンと探し出して訪問することが出来ました。ツワモノどもの夢の跡です。テーマその②は、結論から言いますと、マサイのバクテ、フィッシュヘッドカレーの勝ちでした。我々の訪問したところ、宿泊したところはマレーシアの田舎でしたから、マレー人の方のほうが圧倒的に多い。もちろん、中国系マレー人の方も住まれていて、中国系マレー料理の店もあるのですが、やはりお客さんの人数が少ないところは完成度が違う。マサイのバクテ、マサイのフィッシュヘッドカレーに勝るお店には出会うことは出来ませんでした。

 

マサイにはバクテ(『肉骨茶』を参照ください)のお店に加えて、フィッシュヘッドカレーの店もあるのです。これがまた絶品。結構大きなの魚の頭、オクラが入っています。香辛料が良く効いていてココナッツミルクで味付けされているスープカレーです。パサパサのご飯にトロっとかけて頂く。この店では野菜炒め、スペアリブを焼いたもの、げその唐揚げ等々、ビールにあうお皿も出してくれます。カレーをB級グルメと言うと名古屋の誰かさんに叱られるかもしれませんが、この店ごと日本のB級グルメ大会に出場すれば、入賞は間違いないのでは。ひょっとすると優勝も出来るのではと思うほどです。最も、気候・環境・景色の差は大きいですから、全く同じものを日本に持ち込んでも、マレーの地で食べて感激する味にはならないのですかね。

 

マレーシアの話にお付き合い頂きありがとうございます。もう少し続きます。次回は、いよいよ池袋のおじいちゃん=僕のカミさんのお父上の話を書きたいと思っています。

 

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留守宅の永良部のユリと芝桜。ユリは50㎝くらい。つぼみが出来始めています。名古屋のマンションのユリが既に開化したのは、室内で育てたからなのでしょうね。5月の連休に撮影。

<おまけ>

連休中に、東京の恵比寿駅の近くのシンガポール料理店に行って来ました。『肉骨茶』を読んでくれた方が教えてくれました。有難いことです。シンガポールのローカル料理店、バクテもある。マスターは日本人の方。料理人としてシンガポールで働いていた時、ローカルフードのフアンになり、帰国後この店を開くことにしたとのことです。マレーシア、マサイではバクテ屋さんはバクテのみの専門店ですが、この店はさすがにシンガポール料理を取り揃えたメニュー。バクテに加え、鉄板豆腐、鶏飯、空芯菜等々を注文。ビールもタイガービールを頼みました。シンガポールのバクテは、もともと、マサイの味付けよりも上品な薄味です。久しぶりに懐かしの味と香りを楽しめました。美味しかったです。お店の佇まい・雰囲気もよかった。

メニューには、フィッシュヘッドカレーもありました。残念ながらこれは事前予約が必要とのこと。次回の楽しみとなりました。

お店の名前は「恵比寿新東記」。ホームページを見たら「シンガポール政府観光局第一号認定店」と書いてありました。由緒正しいローカルフードのお店なのですね。お薦めです。クルルのおじさんの紹介です、と言っても何の役にも立ちませんので。念のため。