クルルのおじさん 料理を楽しむ

中華鍋

手元に中華鍋があります。打ち出し式のプロ仕様のものです。横浜市金沢区にある山田工業所製。特注でIH対応型になっています。厚さは1.6mmです。通常のものは1.2mmとのことなのでチョット重いですが熱容量は十分。打ち出し式というのは、鉄板を数千回ハンマーでたたき出して鍋を作る。この山田製作所が国内では唯一のメーカーとのことです。この会社以外はほとんどがプレス式の製造。

僕の名古屋のマンションがIH対応の台所なので、打ち出しの中華鍋の底をわざわざ平らにならして作って頂きました。それも、平らな底の面は鍋の周りの縁の面と並行では無く、わざわざ手元の方に底をずらして作ってあります。つまり、コンロの上に置くと、自然に手前が下がり、奥が上がっている状態になります。

これは、IH対応ではコンロに底を着けたまま料理をするので、前後に揺するのに捌きやすい様に工夫されたもの。厚みを1.6mmとしたのも、ガスコンロのように鍋を持ち上げる必要もなかろう故、置いたままを想定して熱容量を大きくとることを狙ったもの。まさに世界に一つの僕だけの中華鍋!。

これは、先輩というのか、同志というのか、お世話になっている方というのか、お酒友達というのか、とにかく、楽しく一緒に飲んだくれることが出来る先生からのプレゼントです。「ドラゴン先生」。このブログでの通称です。もう十年近くのお付き合いになるはずですが、ある時、例によって一緒にお酒を飲んでいる時に、料理の話になった訳です。普段でも盛り上がるのに、お酒が入っていれば、もう、お互いに絶好調。得意料理の極意を開陳したり、それはそれは大変に盛り上がってしまいました。それ以来、会食の時には(必要な相談ごとがあっての会食ですから真面目な話が半分、いや、もっともっと、真剣な会話はしております。念のため。)料理の話は必ず出るようになりました。最初は、腕前は五分五分かと思っていたのですが、実際は敵の方が奥深く、経験も長そうだ、形勢は大変に不利な状態であることが理解できるようになりました。

そして、最近とどめを刺されました。鍋談義。「やはり、それなりの専用の中華鍋は持つべきである。よい道具は長く使えば使うほど馴染んでくる。」vs「テフロン加工のフライパン、便利で、そしてダメになったら使い捨ての道具。」激論を戦わせ、敗色濃厚ながらも徳俵一枚で踏みとどまり、再戦を約束して解散。その日は千鳥足で家に帰りました。

 

しばらくしてドラゴン先生から連絡があり「暇な時に事務所施設に立ち寄ってくれ」と。ドラゴン先生から呼び出しが掛かるというのは珍しいことなので、たまたま都合が悪くなかったこともあり何事かと日を置かずにお邪魔しました。渡されたのがこの中華鍋。「すでに空焼き済みである。錆止め剤の処理等も済んでいる。今晩すぐにでも料理に使える。」とさすがにプロの発言。なんでも30年来この鍋で料理を続けている由。いやはや、大変な(料理の)経歴の先生と料理の話をしていたものか。反省、落ち込みながらも、そこから立ち直るのが早いのが取柄です。その日はマンションに直帰し、袋をあけて改めてビックリ。前述の通り、これはただモノでは無いという感じが伝わってくる鍋でした。

 

それ以降、二週間ほどで5回か6回は使いました。まずは、何んと言ってもパラパラ炒飯。これは僕の得意料理です(多分、世のおじさん方のほぼ全員の得意料理かと思いますが)。道具が良いと気分も良くなるもので、出来栄えに大満足。わざわざ持ち上げる必要が無いように底を平らにしてもらっているのですが、敢えて持ち上げて、あおり返す。この技は最近ようやく出来るようになりつつあったものですが、これが、スパッと決まりました。重さがある方が返ってバランスがとりやすいのかも知れません。IHではカッコ付けるだけの技ですが、これが出来るとチャーハンが美味しく出来るような気がします。全く、自己満足の世界です。「きょうの料理」のテレビ番組で料理研究家の土井善晴さんが、見事にフライパンを煽ってご飯返しの技を披露「この瞬間が私は大好きです。生きていて良かったと感じるんですよ」てな趣旨のことをシャレ?でおっしゃってますが、あれは本当にカッコよいと思います。

 

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これが、その鍋。「戦艦ヤマト」と命名しました。ドラゴン先生からこの鍋を使用するに際しての指導がありました。「使用する時には、煙が出るくらいまで熱してから油を入れる。使用後は中性洗剤を使いタワシで洗って良し。洗った後は、よく乾燥させること。巷間言われる、洗剤で洗ってはいけないとか、使用後は油を塗るべし、というのは迷信である。自分は、こうして30年以上この鍋を使っているが、今も気持ちよく使える。長い期間使っているうちに油の酸化膜がこびりつき焦げやすくなったときには、改めて、から焼きをして油を馴染ませれば新品同様になる!。から焼きは、火力が強ければ短時間でも出来るが、家庭用のコンロでは30分以上はかける方がよい。」と。いやあ、30年の重みが詰まっていると感心しました。

とは言え、先生のお言葉ながらも、今の段階では、僕は使用後には油を塗って(洗って乾かしてその後に)使っております。油を塗ると何とも重厚な色艶になります。見ているだけで楽しくなるような。その精神状態で記念に撮影したのがこの写真です。「戦艦ヤマト」の気配を感じて頂ければ嬉しいです。

 

もちろん、鍋は観賞用ではありません。使ってナンボ。道具が良いと何を作ろうかと楽しみになるものです。初めて分かりました。それ以前から、健康のこともあり「酢玉ねぎ」を楽しんでおりました。この酢玉ねぎをベースに出来る料理はなんだろう、というのが最近のテーマであったのですが、「戦艦ヤマト」を見ている時に、ハタと閃くところがあったのです。

 

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これがその料理。我ながら上手く出来たと自画自賛。わが生涯ベストの料理です。

鰯の手開き、酢玉ねぎ、ニンジンとピーマン、忘れてはいけないのが、クルルのきびオリゴとしょうが。これで完璧です。せともの楽市で買ったお皿に盛り付けて完成。このレシピは、クックパッドの「クルルのおじさん」にアップします。本日は「戦艦ヤマト」をプレゼントして頂き、料理の意識が高揚しているクルルのおじさんの料理自慢でありました。