クルルのおじさん 料理を楽しむ

俳句のお話、その4.「NHK俳句」

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朝、表題のブログを書き始めようと思っていたのですが、のんびりし過ぎてチョット遅くなってから朝刊を見たところ、ナント、黒田杏子先生が、僕の投句を採って載せてくれていました。ビックリ仰天、そして、感激!。小学生の時に写生大会で描いた絵が思いもかけず「佳作」で張り出された時のような気持ちを思い出しました。すっかり嬉しくなりメールやらラインやらで彼方此方に発信してしまいました。2020年5月2日、日経俳壇です。

 

   春深し一人籠もって飯を炊き   孔瑠々

 

4月10日過ぎごろに葉書に書いて発送した句でした。日経俳壇には確か3月上旬から投句を開始しましたから、6-7度目の応募。”ちゃんと見て採ってくれたんや、杏子先生、大好き、ありがとう”、もう諦めつつあっただけに嬉しい限りでした。

 

 

一旦、本題に戻ります。「俳句」のお話、その4.です。「NHK俳句」講座のまとめ=備忘録です。「秀句に学ぶ」の気持ちを大切にまとめたいと思ってます。お付き合い頂ければ嬉しいです。

TVで放映されている「NHK俳句」を面白く視聴しています。本も今年の一月号から毎月、本屋さんに行って買い求めています。本のタイトルはNHK”テキスト”「NHK俳句」となっています。確かにこれは俳句雑誌ではなく、テキスト=教科書という呼び方が当たっているように思います。

 

 

4月がこの番組の新年度のスタートになります。こういう講座番組は、概して、新しい年度がスタートする月の号は面白いもの。「きょうの料理」を思い出します。このブログでも何回も記載したことがありますが、僕の料理のテキストは、NHKきょうの料理」でした。2007年4月からの一年間のNHK「今日の料理」は、今でも全12冊、本棚に残してあります。特にこの時は「きょうの料理」50周年の年であったので、番組制作にも力が入っていたのかも知れません。カミさんの薦めで、初めての料理本としてこのテキストを買ったのですが、内容が充実しているなあと感心したことを覚えています。

 

kururupapa.hatenadiary.jp

 

いまでも、その月になると、本棚からその月の号を取り出してパラパラ見ることがあります。見るだけで実際に作ったりしていませんが。考えてみれば、もう十数年前の料理本。最近の流行りはもっとチャチャっと出来るものに変わったのかもしれません。ツラツラ考えると、僕は随分とNHK番組にお世話になっているのかも知れません。受信料はチャンと払っていますから、負い目は無いと思っていますが。逆に熱心な視聴者な訳だから喜んでもらえるかな、NHKさんに。

 

 

NHK俳句」も、新年度になると選者の先生が交代され新しいメンバーでの「講座」が始まっています。第一週の選者は、4月17日のブログ『凌ぐ!、2020年4月の景色』で既に記載しましたが小澤實さんです。「令和の新星」をテーマにした講座でした。そして、

第二週が、対馬康子さん。テーマは「こころを詠む」。

第三週は、西村和子さん、テーマは「ようこそ句会へ」。そして、

第四週が、櫂未知子さん、テーマは「俳句ゼロからの出発」。

実は、この第四週の櫂さんの放送を一番、楽しみにしておりました。昔、櫂さんの本を読んだことがありましたので、四人の先生のなかでは唯一知っている名前だったから。物忘れが良い僕にしては珍しく大変に良く覚えておりました。

 

kururupapa.hatenadiary.jp

 

2017年の『正月風景』を書いたブログなのですが、その中に「櫂美知子さんの『食の一句』に面白い句があります。」と書いて一句紹介しております。この本は多数の俳人の方々の「食」の句を一日一句づつ櫂さんが選んで紹介するという構成になっています。この本を読んだ当時は、俳句そのものよりも、「食の切り口からの俳句」ということに興味を持って買い求めたことを思い出します。本の帯には「切れ味の良い文体が俳句の味を引き立てます」と書いてありました。その最初の句、1月1日の句が、

 

   馴染むとは好きになること味噌雑煮

 

でした。ブログでもお雑煮の話を書いていたので面白いと思ったので掲載したもの。とにかくこの本、この句のことを覚えていて、テキストで第四週、新選者=櫂未知子さんを見た時には”おお、あの雑煮の句の本を書いた人や”と懐かしさすら覚えたほど。この雑煮の句を作ったのも櫂さんだと思い込んでいた節もあります。

 

今般、この本を見直して再発見!。この”雑煮”の句を読んだ方は、ナント第三週の選者の西村和子さんだったのでした。こういう偶然の巡り会わせに出会うのは好きな方なので大変に楽しく思いました。俳句の業界(とは言わないのでしょうが)も意外と狭い世界なのかしら、なんてやや失礼な印象を持ったりして。再発見がもう一つ(単に、間違いの発見ですが)、櫂さんのお名前を誤表記していました。美知子さんではなくて未知子さんでした。謹んで、お詫びと訂正をさせて頂きます。

 

 

この第四週の話のオチですが、結局、櫂さんは番組に登場されず。この第四週の番組は、他の講座がスタジオで収録しているのに対して、外に出て番組を作っている。俳句勉強中の芸能人・タレント(だと思うのですが?)の方3-4人が一チームとなり、二つのチーム対抗で、その時々の季語の世界を吟行して選者の先生が点数を付けるという、チョット、ゲーム形式のものなのです。ということで、ここでもコロナの影響。ロケに制限・制約が出てきているので新年度の番組は中止とせざるを得なかったようです。新番組の代わりに、4月26日の番組では、昨年度の第一週の録画を再放送されていました。再放送とは言え僕が見るのは初めて。櫂さんを見れなかったのは残念でしたが、再放送も大変に面白い内容で楽しく拝見することが出来ました。

 

 

 再放送された番組の選者は、宇多喜代子さん。講座のテーマは「昭和のくらしと俳句」。今年に入ってからの三回(今年の1-3月)は、テキストを読み、TVも見て存じておりましたが、やはり講座の第一回目というのは良いモノです。この先生、昭和10年のお生まれですが、とにかく歯切れが良い。俳句の世界では大御所的な存在かと。新年度のテキストにも「旬をおいしく」というコラムの連載が開始されています。4月号では「山菜・蕗の答」、蕗味噌の作り方を説明。俳句は載せられておらず、料理雑誌に載せても通用する面白い随筆?レシピ?です(嫌味ではありませんから、念のため)。司会の女性もしっかり者。他の週の番組を見ても、女性の選者、女性の司会者が多いこと。俳句の世界では、今や、女性陣が圧倒的に優勢な印象を持ちます。

 

 

この番組では、「昭和のくらし」=始末な暮らし、「始末」という言葉のニュアンスを切れ味鋭くお話されていました。そして、

 

   足袋つぐやノラともならず教師妻  杉田久女

 

の句を紹介。昭和のくらし=「つぎあて」という言葉からの紹介でしたが、ナントこの句も僕の記憶にある句の一つだったのです。小川軽舟さんの「俳句と暮らす」のことは『「俳句」のお話』の一回目(先月3月19日)に埋め込んだ通りですが、この本の中に「台所俳句」という俳句のジャンルの話が出てきます。虚子が「ホトトギス」に「台所雑詠」の欄を設け、女性からの投句を積極的に募集したのが女性進出の大きなキッカケとなった。当時は俳句は男性が作るもの、女性の俳人はまずいなかったそうです。そして、その先駆けの女性俳人の一人が杉田久女。この掲出句がその代表作の一つとして載せられていました。

 

 

小川軽舟さんの文章・句は大好きなので、最近もよくこの本をパラパラ見るのですが、またまた面白いことに久女の句の次の頁に宇多喜代子さんの話が出ていました。昭和になり民主主義の時代になると平凡な日常を詠う「台所俳句」は緩いモノと叱責されるようになったとか。時代は「社会性俳句」を求めたと。昭和30年代に句会に出始めた宇多さんも「台所俳句と謗られないような俳句を作らねば」と随分と気負ったこともあったそうです。いまTVで拝見する貫禄十分、歯切れ・テンポのよい宇多さんも若い時には随分と苦労されたようです。昭和の時代のご苦労が、平成、令和になって、女性俳人が圧倒的に優勢な俳句の時代を築くことに繋がったのかと一人納得しました。

 

 

この宇多さんの講座の時の兼題は「たんぽぽ」でした。選者=宇多さんが入選9句選んで紹介する。その中から司会の方が一句選んだあと、宇多さんが入選の中から、特選三句を選びます。視聴者も一緒になって”自分が選者ならどれを選ぶか、先生はどういう句を採るのか”面白く見ることが出来ます。特選三席を記載します。

 

一席 黄たんぽぽ月と地球は兄弟か

 

二席 たんぽぽやはいはいがもうよちよちに

 

三席 蒲公英の絮や眼下に太平洋

 

司会の方が選んだのは三席と同じ句、僕が三つ選んだ中では二席の句が同じでしたが、一席の句が意外でした。宇多さんの感性、失礼ながらお歳の割にはエライお若いかと。読み方によってはマンガ的な気配もあり、僕は面白みがあると思ったのですが、これを一席にするとは思いませんでした。僕が選んだあとの二つは、

 

  たんぽぽの隣に座る昼休み

 

  たんぽぽが囲む高校グラウンド

 

僕の発想が日常的に平凡というか、感性が緩いというか悩ましいところです。「秀句に学ぶ」というのが俳句の極意だそうですから焦らずにボチボチと楽しみたいと思っています。

 

 

軽舟さんの本の続きの話です。また、パラパラと頁をめくっていると、ナントナント、またまた大発見。第一週の選者の小澤實さんのことが記載されていました。軽舟さんは俳句雑誌「鷹」に加わり藤田湘子に師事、その後「鷹」編集長、更に湘子死去に伴い「鷹」主宰を引き継いだとのことですが、「鷹」に入会した時の若き編集長が小澤實さんだったそうです。兄弟子であったと。年齢も軽舟さんが五歳年下(のはず)。小澤さんの句をいくつか紹介されていました。

 

  酒飲んで椅子からころげ落ちて秋  實

 

  入る店決まらで楽し冬灯  實

 

小澤さんはイロイロな事情で「鷹」を離れることになったそうですが、お二人の仲の良い繋がりを垣間見ることが出来たようです。小澤さんの句、親しみが沸きます。面白い句ですよね。軽舟さんに言わせると「湘子もそうだけれど、酒飲みは飲むときは飲むことに専心しているので案外酒の句が少ない。小澤さんは酒飲みにして酒の俳句が多い」と。小澤さんの句に親しみを覚えるのは”酒飲み”の線が繋がっているからかと。これで、第一週の講座も益々、面白く拝見出来そうに思います。

 

 

 第二週、第三週もそれぞれ面白い内容でした。第二週の対馬康子さんのテーマは「こころを読む」ですが、第四週の櫂未知子さんの講座(これは前述の通り放送は無しです。テキストの講座から)ではこれとは真逆のようなことが記載されています。櫂さん曰く「初学のころには”心のこもった句を大切に”とか”季節の移り変わりを大切に”とか言われるが----そういった精神論めいたことよりも、まずは『音数を考えて欲しい』と言いたい。定型詩としての俳句を徹底することが先決かと存じます」と。

 

一方の対馬さんの教え方も「俳句五段飛ばし」とかで斬新な発想を広げる方法=頭の体操!を紹介されていました。対馬さんの今月の兼題は「蝶」。ご自分の句として、

 

  蝶結びほどけば幾千万の蝶  康子

 

年間のテーマは「こころを詠む」ですが、今月のサブテーマは「見えないものを見る」でした。金子兜太さんの句の紹介もありました。

 

  涙なし蝶かんかんと触れ合いて  金子兜太

 

別な本を見ていたら、対馬さんの代表句らしき句を見つけたので記載しておきます。

 

  国の名は大白鳥と答えけり  対馬康子

 

女性の発想の方が俳句という形での表現には適しているのかと思わせるような。子規さんや虚子さんが今の時代にいらっしゃれば、どんな反応をしめされることになるのかしら。ちなみに対馬康子さんは昭和28年生まれ、僕よりもチョット年少さんです。

 

 

長くなりましたが、もう一息。第三週の選者は西村和子さん。女性のお生まれを記載して申し訳ない気もしますが、テキストのプロフィールに皆さんの生まれ年は公表されていますので。西村さんは昭和23年生まれですから、僕よりもチョットお姉さん。姉御イメージですかね。小澤さんが昭和31年生まれですから、だいぶ後輩。まだまだ若く感じてしまいます。やはり、自分よりも年配の方を見ているほうが安心感があるように思ってしまいます。

司会は僕にはもうお馴染みの岸本葉子さん。女優の方をゲストに迎え、句会のイロハから、俳句の勉強の仕方、ノートの取り方、記録の残し方等々を分かりやすく説明されていました。

西村さんの句は、1月1日の句としてお雑煮の句を紹介しましたが、番組の兼題は「春燈」。ご自分の句として、

 

   子の寝息確かめ消しぬ春灯(はるともし) 和子

 

この番組でも同様に選者の和子さんが選んだ特選三句を記載しておきます。

 

第一席  星を見に出て家々の春燈(はるともし)

 

第二席  そのことに触れず語らず春燈下(しゅんとうか)

 

第三席  春燈や夜遊び謀る六地蔵

 

僕が一番面白かったのは第三席の句。コミカルで面白い、春燈の風情が出ていて素晴らしいと思いました。これ以外では

 

   春燈や帰るにはまだ早すぎて

 

会社で残業は終わったが、このまま真っすぐに帰る時間ではないぞよ、という気配がうまく出てるなあ、酒飲みにはこの気持ちはよく分かると。

 

 

日経俳壇に載せてもらったことを彼方此方に 連絡したら、たくさんの方から”お祝い!”の返信を頂きました。ドラゴン先生からは「黒田杏子選が値打ちがある、コメント貰っているのも凄い!」と珍しく素直に褒めてくれました。嬉しいなあ。

黒田杏子さん、昭和13年生まれとの事なので僕よりも一回りお年上。オカッパ頭とモンペ姿がトレードマークになっています。女性俳人のなかでは、宇多さんと並び称されていらっしゃる方だとか。重鎮、大御所(これは男性を指す言葉ですかね)ですね。代表句の一つです。

 

   白葱のひかりの棒をいま刻む  黒田杏子

 

 

一夜開けて、 やや落ち着きを取り戻しました。俳句はゴルフと一緒で、100人の俳人がいらっしゃれば、100人の先生がいるのかとふと思い至りました。5月号以降も、対馬さんと櫂さんの指導ぶりがどんな展開を見せるのか楽しみです。お酒大好き人間と分かった小澤さんの真面目な顔を見るのも楽しみですねえ。西村さんと宇多さんの姉御の元気な様子をみるのも。いまから一年間、楽しめそうです。・・・『続くかな?』。

黒田先生には、お礼も含め新しい句を三句書いて葉書を出しました。また、採って欲しいなあ、と欲が出ます(だいたい、欲が出た時はダメですね。これもゴルフと同じ)。

 

 

ついつい長くなりました。最後までお付き合いありがとうございました。皆さま、引き続き、くれぐれもご自愛下さいますよう。 

 

 

おまけです。

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次女の指導よろしきを得てタカト君が粉を捏ねて「うどん」作りで活躍しています。ラインでその様子を見れるのがホントに楽しみです。影響を受けて、僕も新作「ミートパイ」に挑戦(生地は市販のものですが)。”味が決まらなかった”と思いましたが、一晩経ったものを食べたら結構しっとり美味しかったです。いま見ると成型に工夫が必要だなあ。反省。2020年5月1日、料理と撮影。