クルルのおじさん 料理を楽しむ

名古屋の景色・鯱城学園の講座、そしてコロナ

 名古屋市・栄にある「名古屋オアシス21」。公共・商業の複合施設です。「水の宇宙船」と言われているそうですが、今まで認識がありませんでした。お隣の愛知県美術館のある文化芸術センタービルの上階から展望して初めて理解出来ました。空中に浮かぶガラスの大屋根がシンボルとのことです(下の広場を通行しているだけでは余りピンときません)。右奥は改修中の名古屋テレビ塔です。2020年2月11日、撮影。

 

この日、2月11日(火)は「8クラブ展」の初日でした。この展示会は、鯱城学園の書道、水彩画、水墨画、写真、陶芸、絵手紙、パソコン、パソコンペイントの8クラブのクラブ員が作品を出展するもの。中区区役所の名古屋市民ギャラリーの7階展示場で五日間、開催されました。時間があったので、すぐ近くの愛知県美術館でやっている「日展」=第6回日展・東海展と「コートールド美術館展」を見てきました。仲間の友人が「日展」彫刻の部で特選を受賞したとのことで見に行こうと思っていたのですが、同じ場所でやっている「コートールド」が面白いとのアドバイスをもらったので両方見ることにしたものです。

 

日展」の作品レベルは素晴らしいものでした。残念なことに「彫刻」は展示スペースと作品の数・大きさがアンバランス、特選をはじめ多数の力作がトコロ狭しと並べられている状態、窮屈そうで可哀そうでした。「コートールド」は予想以上に良かったです。ゴッホ、モネ、ルノワール、マネ、モディリアーニ、ゴーガン等々。昔、見て印象に残っていた点描で色の彩を表現する画家の名前がスーラであることを思いだしたり、楽しく時間を過ごせました。

 

いつもの事ながら「コートールド美術館」というのがナニなのか知らずに出かけたのですが、コートールドさんはイギリスの実業家の由。化学繊維事業で財を成し、1920年代に、当時はまだ高い評価を受けていなかった画家たちの作品を自分の目で選んで収集したそうです。エライ人ですね。ロンドンにある美術館ですが、今や、この美術館は”イギリスが世界に誇る印象派、ポスト印象派の殿堂”と言われているとか。三月中旬までやっているはずですから、まだご覧になってない方にお薦めです(と言っても、今週に入ってからのコロナ大騒動が心配ですが)。

 

 

8クラブ展は、お陰様で盛況のうちに終了しました。5日間、パソコンクラブの展示室へのご来場者だけで1,200人以上(多分)。最終日の15日は、作品を撤去し会場を掃除してから、クラブの仲間と打ち上げをしました。土曜日の夜でしたので、お酒が好きで時間がある人は宴会モードに。僕も含む三人のおじさんは、夜の11時ごろまで熱心に反省を続けました(ワインを飲んで楽しく歓談しました)。今思うと、この時は、まだコロナ云々が無い平和な時で良かったなあと思っています。

 

 

前回以降の鯱城学園の講座内容を記載します。例によって僕の備忘録として書いてます。お付き合い頂ければ嬉しいです。

 

 

2月19日(水)、共通講座。お題は「ユニバーサルデザインとは」。

E&Cプロジェクト名古屋代表、名古屋芸術大学デザイン領域非常勤講師の小塚武志さんが講師です。講義を聴く前には、「ユニバーサルデザイン」というのは”トイレマーク等、万人が理解できる分かりやすいデザインのことかな”という程度に考えているだけでした。講義は奥が深い内容でした。僕は全く認識が不足しておりました。

 

講義を開始する前に、空のシャンプーボトル、牛乳パックが場内に回覧されました。そして小塚さんから「ユニバーサルデザインは、最近では小学校の教科書にも紹介されています。意外と大人、特に年配の方で知らない人が多い」との説明が。まるで僕に向かって話されているような口ぶりです。

 

E&Cプロジェクトでは、聴覚障害視覚障害の方や車いす生活の方の「日常生活の不便さ」を調査して「共用品」デザインを開発する活動をされています。健常者には気づきにくい、これらの方々の日常の不便さを見出す。「従来は、モノに合わせて暮らす時代であったが、今後は、障碍者、高齢者への配慮の時代に変えていこう。バリアフリーから更に進めて、共生・共創することが出来る時代、更には、身体的障害を個性として捉える時代にしていこう」というものです。 

 

回覧されているシャンプーボトルを手に取ると容器の側面にチョットした凸の列が付けられていました。リンスの容器には付いていないそうです。風呂場で視覚障害の方が触っただけでシャンプーとリンスの区別を瞬時に出来るようになっている。当然、ほぼ全てのメーカー製品にこの凸列が付けられている。このプロジェクトが貢献した一例だそうです。同じく、牛乳パックの注ぎ口のところには、凹の切込みが入ってました。これも牛乳とジュース等をパックの注ぎ口に手を当てるだけで区別が出来る仕掛けです。全く知りませんでした。自分の認識の無さに恥ずかしくなりました。

 

持ちやすい形の器、見やすいデザインの書体、指をケガする可能性の少ない俎板、等々の紹介がありました。健常者が考えもしないところに不便がある、それを見出して解決していこうという考え方、まさに目から鱗のお話です。

 

 

「IBOT」という4輪駆動の電動車イスを紹介されました。アメリカのベンチャーの製品ですが、プロモーションビデオを見ると、まるでSFの世界の乗り物と思うほどです。普段は4駆の普通の車イスなのですが、立っている健常者と話す時には、4駆が2駆に変わって車イスが立ち上がる!。まさに四つ足動物が二本足になるイメージで車イスが立ち上がり健常者と同じ目線で話が出来るようになる。そして、誰の助けも無しで車イスのままで階段を上り下り出来る。同じく、バスにも乗り降りが出来る。技術的には実用化にもう少しのところまで来ているそうです。一時はスポンサーが不在となり頓挫する懸念もあったそうですが、トヨタグループが協力することになった由。

 

勿論、大変に高価な車イス(数百万円はするそう)ですが、講師の方に言わせれば「車イス生活の方からすれば有り金をはたいても是非欲しい商品であろう」と。”そうだろうなあ、自分がもしそうならば何としても欲しいと思うだろうなあ”と感じました。

 

講師の方がこれを紹介した意図は別にあって「技術的な問題が全てクリアーされて商品化されることになっても、日本では道路交通法がネックになって実際に表の道路で使うことが出来ない。そして、法制上の改正をしていこうという機運・方向付け、準備が出来ていない、ということが問題だ」とのご指摘でした。不便を解決していくためには、ハード面だけではなくて、ソフト面のフォローが同時並行して必要であることを強調されていました。

 

 別な例として「補助犬法」のお話をされました。盲導犬聴導犬介助犬のことを補助犬というそうですが「障碍者の方からすれば、補助犬は自分の体の一部も同然だが、過去の長い間、レストラン等々に入る時には補助犬を一緒に連れて入ることが出来なかった。漸く平成14年(2002年)に「補助犬法」が成立して一緒に入ることが出来るようになった。しかし、今でも、まだ日本ではその理解・認識が十分では無いと懸念される」と。補助犬が居てくれても、現代社会では法令を含む環境整備が整わなければ役に立たなくなってしまう、ということなんですねえ。

 

 講義の最後には「街で見かけるヘルプマーク(マタニティマーク等々)は、その人が助けが必要な立場であること表現するマークですが、最近は、助けを必要とする人は声をかけてください!ということを表現するマークを付ける運動が進んでいる」ことを紹介されました。

東京大学の学生さんが立ち上げたプロジェクトだそうで「エンパワープロジェクト」と呼ばれているそうです。「協力が必要な時はお声を!」かけてください、ということを意味するシンボル・マーク「マゼンタ・スター」を身に着ける。協力する側が表に出ていく=「協力者がカミングアウト」する運動とのことです。この運動のことも全く知りませんでした。

 

レジメの最後に「やはりハード面だけでは解決できない問題はハートが解決」と記載されていました。やはり最後はハートが大切!、大変に印象に残る言葉でありました。今までの講義のなかで一番重たい内容であったと感じております。

 

 

久しぶりのお弁当。収穫した野菜をふんだんに入れました。ちゃんとロマネス”コ”も使っています。冷めてもサクサクして良い食感です。そして最近、私はますます玄米ご飯にハマっております。白米を加えず「やわらか玄米」100%で炊きました。2020年2月19日、撮影。

 

 

同日、午後の園芸講座です。

お題は『桜と花見の文化史』。今日の講師は日本樹木医会・愛知県支部樹木医・庭師の尾関宗弘さん。園芸科の専門講座も充実しています。三学期に入ってから「ガーデニングと椿」、「梅と椿」、そして今回は「桜と花見の文化史」=サクラに焦点をあてた講義となりました。

 

尾関さんから「私は花見大好き人間です」との自己紹介がありました。前々回の「梅」の講義の時には桜との対比をしながらの講義でしたが、今回もやはり「梅」との対比から。

まず「桜は、梅とは違って『日本原産』の植物」であると。サクラの種類は野生種と園芸品種とを合わせると300種類以上もあると言われているそうで、学者の間でも分類については意見が分かれるところも多いとか。野生種のなかで鑑賞の対象として重要なものは、ヤマザクラ群のヤマザクラ、オオヤマザクラオオシマザクラ、カスミザクラ。エドヒガン群のエドヒガンザクラ。カンヒザクラ群のカンヒザクラがあると。園芸品種としては総称として”サトザクラ”と尾関さんは呼んでいるそうです。ソメイヨシノもこの範疇に入ります。ややこしいですが、日本原産と言っても「種」は遥かネパールが起源となっており人類発生以前に日本に辿り着いていたという意味だそうです(難しい)。

 

文献上、サクラが登場するのは奈良時代のこと。記紀万葉に登場しています。詳しく万葉集に登場する植物の頻度ベストテンの説明がありました。①ハギ(138)、②ウメ(118)、③マツ(81)、中略、⑧サクラ(42)。ウメの登場回数が多いのは、この時代は中国の文化的影響が強く、中国から移入されたウメがサクラよりも詠まれた回数が多くなっていた、との説明でした。

 

花見のルーツについてです。これは面白い考察でした。

縄文時代、サクラはすでに「材」として利用されていたそうです。古代農耕が始まるとサクラの開花は田植え、種まきの「農事暦」して利用され、花見は娯楽ではなく農耕儀式であった。

●古代から中世にかけては、「観梅」から「観桜」に転化していく時代。812年、嵯峨天皇神泉苑で桜花の下で宴会をしたとか、仁明天皇(在位833-850年)の時代、京都御所の「右近の橘、左近の梅」の「梅」が「桜」に変えられたとか、そして、900年代になると、桜を詠む歌が梅を上回ったそうです。

この時代、歌に詠まれた桜とは「吉野の山桜」を対象としたもので、吉野山金峰山寺に参詣する人々がサクラの苗木を寄進する習慣ができ、それが伝承され名所化して「一目千本」の景観が生まれたとのことです。

---中略---

●現在のような花見が行われるようになったのは、江戸時代八代将軍徳川吉宗(在位1716-1745年)の時代。それまでは、いわゆる「一本桜」の花見で、寺院等に散在する名木を参詣がてら鑑賞するという形態であった。吉宗さんは1717年に100本の桜を墨田川東岸に植えさせたり、品川の御殿山、王子の飛鳥山にも大量の桜を植えさせたそうです。やがて桜の開花のころになると庶民が集まり飲食をともにするようになったと。

●この時代の桜は、ヤマザクラエドヒガンザクラが中心で、サトザクラも花見の対象となっていたとのことですが、イロイロな品種があることで、花見の期間は一か月ほど、ずっと花が絶えない状態が続いていたそうです。現在のソメイヨシノ一色の花見では高々10日ぐらいであるのとは極めて対照的であったと。

 

 

 ソメイヨシノという品種は雑種なので、その種子が取れても親と同じ性質にはならない。ソメイヨシノを増やすには挿し木か接ぎ木ということになる。すなわち、ソメイヨシノという種は”クローン”=日本国中のソメイヨシノは全て同じ樹であるとのことです。葉よりも先に花が豪華に咲き、散り際の良さも日本人好みである。園芸的にも活着しやすいので次第に広がっていった。現在のソメイヨシノのサクラの名所は戦後の高度経済成長の時代に爆発的に拡散したものであると。開花情報が出せるのも、均質なクローン植物ならではのことだそうです。

映画・TVで、「遠山の金さん」や浅野内匠頭切腹の場面の背景にソメイヨシノが映っているが、あれはオカシイ。ヤマザクラでなければダメである、とのことでした。

 

 

その筋の日本文化の研究では、今の花見の形態は上野から始まるとされており、花見の要件には三カ条があると。すなわち、①一本ではなく群のサクラを見ること、②詩歌ではなく飲食を伴うこと、③一部の階級では無く、多数の群衆で行われること。

花見大好きな尾関さんとしては、昨今、サクラの保護とは言え、飲食を禁止する花見の場所が増えてきていることを大変に危惧しているとのことでした。江戸、明治の時代、もっとゆったりと花見をしていたであろうことを羨ましく感じておられました。こういう楽しい講師さんとは、是非、花見の時節にゆっくりと講義を聴きながら一緒に飲みたいものだと思いました。

 

 

この次の講座は、翌週の2月26日(水)でしたが、すでにコロナで大騒ぎしておりましたので、大ホールでの共通講座のほうは「自主休講」としました。午後の園芸講座には出席しました。「洋ランの楽しみ方」、ご存じ吉田篤さんの講座で大変に面白かったです。

その後、昨日になり「来週以降、休校とする」旨の案内が通知されました。年度末の行事もほぼ全て取り止めです。日本国中、大騒ぎになっています。パニックにならず、冷静に対応するしかないと感じています。皆さま方もくれぐれもご自愛のほど。最後までお付き合い頂きありがとうございました。

そう言えば、今日は四年に一度のうるう年の日、でした。次のうるう年の日はどうしているでしょうか、楽しみです。

 

 おまけ;吉田さんの講義で。

右が洋ラン=カトレア。ポッドに入っていたものを、教室で吉田さんのご指導の下に各自で水苔を回りに捲いて素焼きの鉢に植え替えたもの。水は少なめに育てる。冬も10℃以上で管理すること。 

左はクリスマスローズ。水はけ良く植え込みをすること。春先は日当たり良く、夏は木陰かヨシズで遮光する。植え替えは秋に行う。鉢植えは1-2年に一度、株分け植え替えをする。アルカリ性の土壌を好むので、石灰、卵の殻を入れる。

写真のクリスマスローズは「ピコティ」という種類です。白に赤の縁取りが特徴とか。株分け出来るまで上手く育ってくれますように。2020年2月26日、撮影。