くろ谷金戒光明寺にいらっしゃるアフロヘアスタイルの仏様。ドラゴン先生のお気に入りです。2020年11月15日、撮影。
11月のNHK俳句のまとめです。引き続き、僕の備忘録として記載しています。お付き合い頂ければ嬉しいです。
11月第一週、司会は戸田菜穂さん、選者は小澤實さん。今週の兼題は「インバネス」です。いきなり、前回に続き吉本興業の宮戸洋行さんがインバネスを羽織って登場しました。インバネスとは明治時代に流行った、男性が和服の上に着る、ゆったりとした袖なしの外套です。宮戸さん、なかなか良く似合っていました。ゲスト「令和の新星」は西村麒麟さん(男性です)。西村さんの「インバネス」の句が紹介されました。
小澤さんはこの句の主人公を「文豪永井荷風を思い出す」とイメージされましたが、西村さんからは俳人の八田木枯さんを描いた句とのお話がありました。西村さんが俳句にハマるきっかけになったのは、山頭火の句とのこと。
どうしようもないわたしが歩いている 種田山頭火
小澤さんが好きだと言う西村さんの句です。中国の故事を踏まえた句とか。
へうたんの中に見事な山河あり 西村麒麟
西村さんは俳句の勉強のために原稿用紙に句を書き写しているそうです。作者ごとにまとめてあり、もう何十枚(もっとかな)にもなっている由。小澤さんに言わせると書き写すというのは”自分の体のなかに(その句が)沁み込んでいく”ことになり、勉強には大変に良い方法だそうです。
今週の特選三句です。
三席 このインバネスなら質草になるか
二席 パビナール依存斜陽をインバネス
一席 インバネス脱ぎ給え酒飲み給え
一席の選者評、”酒飲みが友を迎え早く一緒に飲もう!という願望が表されているのが面白い”。選者、お酒大好きの小澤さんの願望ですかね。ゲストの西村さんもこの句を取っていました。戸田さんも同様で、”中原中也がイメージされる”と想像を膨らませていました。この方の感性もなかなかのモノです。特選以外の面白いと思った句です。宮戸さんが取っていました。熱海の海岸の像が写されていましたが、笑ってしまいました。
インバネスの貫一よ足蹴はだめでせう
この後、ゲストの西村さんの奥さんがオンライン音声で登場。西村さんは「俳人の系譜」を奥さんに毎日レクチャー続けているとか。また、奥さんは毎朝、兼題を出して(お題は、昨晩の料理とか日常のモノが多いそうです)西村さんが必死になって作句しているとか、大変に仲の良さそうな気配が伝わってきていました。益々のご活躍をお祈りします。
第二週は、司会が武井壮さん。選者は対馬康子さん。ゲストに、DAPumPのKENZOさん。武井さんとは大変な仲良し、武井さんの後輩になるそうです。対馬さんの今年のテーマは「こころを詠む」ですが、今月は「心と体」。冒頭、KENZOさんから「ダンスはもともと言葉でなく、身体で表現するもの」との話が出て盛り上がっていました。今週の兼題は「手袋」。特選三句です。
三席 狐火や手袋買いに来たりしか
二席 手ぶくろへ蕾のやうに手のかたち
一席 鳥の抜け殻として拾う手袋
三席は「狐火」「手袋」が”季重なり”ではあるが許される範囲であると対馬さんから説明がありました。この辺りの”範囲”というのが初心者にはなかなか理解し難いところです。二席はゲストのKENZOさんも取っていました。パフォーマンスの時、手の形はいつも大切に注意しているそうです。一席は「鳥に”抜け殻”は無いが、そう詠んだことで喪失感が表現されていると感じた」と。対馬さんらしい選句のように感じました。対馬さんの兼題句が紹介されました。
手袋の五指恍惚と広げおく 対馬康子
これをスタジオでKENZOさんがダンスで表現。また武井さん、KENZOさんが「心と体」をテーマに詠んだ句の披露がありました。
鞍越しの鼓動尖りて冬来る 武井壮
秋の声体に問いかけ夢に舞う KENZO
ジャンパーを脱ぎ捨てて立ち夢に舞う KENZO
対馬さんも「体を通じて、身体を動かして感じ取る。そんな表現を教わりました」と高く評価していました。お二人とも、大したもんだと感心します。
第三週は、司会が岸本葉子さん。選者は、西村和子さん。そしてゲストはあのレスリングの浜口京子さん。京子さんは二年前ほどから俳句を楽しんでいるとのことで、ご自分の俳句ノートを持参、披露されていました。一頁に句と絵が書かれて(描かれて)います。先生に付かれて句会、吟行にも参加されている由。絵を描くのは小さい時から大好きだったとか。句との構図もよく色彩感覚にも秀でていると思いました。今週の兼題は「茶の花」ですが、京子さんの句です。
茶の花や子のとき食べし菓子に似て 純気
純気というのは京子さんの俳号で、「純粋」と「気合!」とのことです。京子さんはいかにも純粋・素直・無邪気・穢れの無い(ナント表現すれば良いのか悩みますが)メルヘン調の語り口でした。今週の特選三句です。
三席 白き猫茶の花垣に消えにけり
二席 茶の花や赤児を抱いて姉戻る
一席 茶の花や舞妓の下駄の軽やかに
一席の句についての選者の評。「省略が良く効いている、場所、時を説明していないがその情景がパッと見えてくる」と。西村さんによると、この場所は栄西さん開山の京都建仁寺、「舞妓の下駄」から夜では無い、お昼の景色というのが良く分かるとのことでした。
特選に選ばれませんでしたが、面白いと思った句です。
茶の花や先ずは天気の話など
今週の「ようこそ句会へ」は「袋回し」の紹介でした。前回のブログで「探題」のことを先走って書いてしまいましたが、改めて「探題」というのは「詩歌や俳句の会で、いくつかの題を出し、各人がクジで探り取った題によって詩歌を詠むこと。”さぐりだい”」。「袋回し」というのはこの「探題」の名残、変形と言われるもの。
このお三方にあと二人の方が加わって、実際に「袋回し」をやっているのをビデオ放送されました。
各自がそれぞれ封筒一枚に題を書く。季語でも良いし、名詞でも動詞でも漢字でもカタカナでも良い。その題で、出題者が一句作り短冊に書いて封筒に入れて、他の人には題が見えない様にして、次の人(右隣の人)に回す。回された人はその封筒に書かれている題で句を作り短冊に記載して封筒に入れ、更に次の人に回す。これの繰り返し。五人いれば、一つの題に対して五句が封筒に入れられて最初の人のところに戻ってくる。それを清記する。あとは選句、披講と句会が進んでいく、というもの。
回って来た時に、題を声に出してしまうのはご法度。平然と寸時考え、さらさらと短冊に記し、袋に入れて隣に回す。これを3-4分で熟す。放送でもそうでしたが、ベテランが右隣にいて、回すのが遅くなったりすると「暇だなあ!」とかプレッシャーの言葉がかかってくるそうです。西村さんに言わせると「速く作ることを楽しむ」「集中力を高めることが出来る、作句の訓練になる」そして「苦し紛れに詠んだ句にろくなものはない、と思うかも知れないが、袋回しで咄嗟に詠んだ句が今でも愛着の句になっている」と大変に効用が多いことを紹介、やってみることを薦められていました。僕は残念ながら、全くの不得意分野かと感じてしまいました。封筒ため込んで「やーめた、パス」なんて言いそうです。
第四週です。櫂未知子先生の「俳句さく咲く‼」。生徒サンはレギュラーの四人が出席。宿題のお題は、「冬めく」「初時雨」「枯野」「蒲団(ふとん)」「熊手」「鴨」「山茶花(さざんか)」それと自由三句。前回同様、8点を頂く句が増えてきました。生徒さんの勉強の成果ですね。<羨ましい>。いくつか紹介します。塚地さんの”冬めくや”がいいですねえ。
冬めくや鍋底の焦げ落としたり 塚地武雄
たそがれの枯野を歩く子が一人 塚地武雄
冬めくや犬の遠吠え轟ぬ いとうまい子
今週の学習テーマは、「ほんの少し、文語」。俳句は文語が基本ですが、櫂先生に言わせると”現在の俳句は文語と口語が混然一体になっている句が多い”と。櫂さんが文語を支持する理由はいくつかあるそうですが、着地がキレイ、切れ字に馴染む、文語は「音数を節約できる」。それから「成功した口語表現は一回しか(使用)できないが、文語は繰り返し用いられてきたので、作者皆で共有しやすい」というものでした。「口語は一回性、文語は繰り返し」とテクストに記載がありました。<なるほど>。
この後、番組ではお馴染みになった「吟行」に。体育館のようなところで「竹馬」に挑戦。竹馬の先生が歯医者さんの方だとかで、竹馬で縄跳びをしたり、竹馬に乗ってトロンボーンを吹いたり。トロンボーンの曲は「焚火」でした。「竹馬」「縄跳び」「焚火」全て、季語だそうです。吟行「竹馬」の句は省略します。最後はミニ句会、お題は「冬ざれ」。塚地さんが特選に選ばれ、今週は二冠達成。塚地さん、急速な上達ぶりです。
冬ざれにつめたき門を閉めにけり 塚地武雄
今週の投句の兼題は「人参」、大賞に選ばれた句です。
人参や地平線にも齢あり
面白いと思った句です。鯱城学園の園芸科の畑で体験したことを思い出しました。
人参を抜く穏やかな大地より
櫂先生の句です。テキストに掲載されていました。
ゆるゆると人参洗ふ日なりけり 未知子
この句、いいですねえ。
テクストの櫂先生の添削コーナーにドキっとするような記事がありました。9月号の兼題は「玉蜀黍(とうもろこし)」でしたが、”取り合わせ”の(陳腐な)例の説明です。
○○○○を吹くように食む玉蜀黍
唐黍を○○○〇のごと喰ふ少年
唐黍を食ぶ○○○○を吹くように
更には、
玉蜀黍〇ー○○〇の如吹いてみる
玉蜀黍〇ー○○〇吹くやうに食べ
〇〇〇〇の答えは「ハモニカ(ハーモニカ)」。投句のなかに100句近い類句があったそうです。他の楽器との取り合わせは無し。「”自分がハモニカを思いついたぐらいなのだから、他の人も”と思ってください。人の発想にはそれほど差はありません」と(厳しい指摘がされていました)。僕がハモニカを取り合わせた訳ではありませんでしたが、”有り得るなあ”、と感じた次第です。怖い、怖い。
11月号のテキスト表紙に掲載されていた句です。
跳び箱の突き手一瞬冬が来る 友岡子郷
テキストを買って表紙を見た時に、作者を正岡子規と勘違いしておりました。”子規さん、現代的な句を詠んでたんやねー”、”あの時代にも跳び箱普及してたんやあー”と思い込んでいたのですが、今、書き写して見ると自分の思い違いに苦笑い。子規さんにも、友岡さんにも大変に失礼いたしました。小澤さんのおっしゃる通り”書き写す”というのは大変に効果があると思います(意味が違うかも知れませんが)。
この句に櫂さんが選・鑑賞を書いていました。「『冬に入る』でもなく『冬来る』でもなく、『冬が来る』。俳句が一瞬を切り取るものだとするならば、まさしくその句はそう。躍動的で忘れがたい作品となった」。おっしゃる通りだと思います。
おまけの句です。櫂さん宿題の「冬めく」という季語が良いなあと思ったので。
冬めくやあと一枚を重ね着て 孔瑠々
冬めくやさはさりながらぬる燗で
冬めくやタコ焼なんぞ久しぶり
吾ながら駄句ですねえ(恥ずかし)。
おまけの料理です。
最近、焼きそばに凝っています。野菜をたくさーん入れて。味付けは麺にお酢と醤油・お酒で下味をつけておいて、フライパン(鉄鍋、もちろん、自慢の「戦艦大和」で)で炒める時にウースターソースを投入する。あっ、忘れました。油揚げも刻んで投入しています(豚肉も適当に)。野菜、油揚げと麺がうまく混じり合って美味しく頂いてます。2020年11月26日、料理と撮影。
今回も、アップする最後の時に、”COOKIE"云々が表示されてナカナカに苦労しました。当初からお世話になっているエキプロさんにメールで教えてもらってなんとか更新することが出来ました。感謝、感謝です。