クルルのおじさん 料理を楽しむ

『2030未来への分岐点』

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名古屋市千種区平和公園の猫ヶ洞池(ねこがほらいけ)。久しぶりに平和公園一万歩コースを大回りして歩きました。隠れ家から歩いてすぐの処にコースの起点があります。季節も良くなってきましたので閉じ籠っていないでウオーキングを楽しみたいと思っています。今日は約二時間ほど歩きました。快晴、気持ちの良いウオーキングでした。2021年5月6日、撮影。

 

 

 5月7日、緊急事態宣言が5月末まで延長されることが決まったと報道されていました。東京、大阪・京都・兵庫に加えて、愛知と福岡も対象(12日から)となりました。行政措置に対する自分の反応が””鈍感””になってきていると感じておりますが、このところの変異株の感染の広がり、重症者の増加が著しいことはやはり気にかかります。さすがに外食、会食の機会は出来るだけ少なくするように心がけるようになりました。

 

 幸い、隠れ家に一人いても楽しく時間を過ごすことが出来るので有難い限りだと思っています。TVはもっぱらニュースとスポーツ番組だけでそれ以外は余り見ていませんが、この日、たまたまテレビをつけたらNHKのBSでこの番組をやっていました。『2030未来への分岐点---水・食料の問題』。4月に放送があったものの再放送のようですが最初の放送は見逃していました。

 

 

 今年は秋に国連・食料サミットが開催されるそうです。2030年にSDGs達成を目標に掲げていますが、もちろん「食料」は大きなテーマの一つです。このNHKの番組もSDGsのテーマを順次取り上げている作品の一つだと思います。いかにもNHK的な取り上げ方だと思うのですが「食料」には以前から興味・関心を持っているので興味深く拝見しました。以下、自分の備忘録として書いておきます。お付き合い頂ければ嬉しいです。

 

 

番組の構成は、問題提起⇒その重大性、原因・要因⇒そして、その解決策?、となっています。資料解説だけでなく世界各地での実際の取材映像、ドラマ仕立て、インタビュー形式で組み立てられているので見ていて飽きなかったです。

問題を放置しておけば近未来の2050年にはフードショックの発生が現実になるということを強調しているのが印象的でした。フードショックとは食料の不足により「社会の不安定化、難民の発生、暴動、飢餓」を意味しているもの(と思います)。

 

●問題提起としては、「先進諸国、特に日本での『飽食』の生活。それに対して一方では「8億人が飢餓」という現実。その二つが存在している世界」。「飽食」に付随して「食品廃棄、食品ロス」の大きいこと。日本の食品ロスは年間612万トンに達していて、その量は国連の食料支援の1.5倍の量に匹敵していると。

とにかく、「現在の『食料システム』は持続可能なものではない」。「食料システム」という言葉は現在の世界の食料の生産・加工・輸送そして消費までの全体の流れ(および、その矛盾・歪み)を指しているようです。

 

 

●「持続可能でない」ことの矛先はまず「肉」の大量消費に向けられています。

牛肉1㎏の生産に要する飼料(代表的な作物がトウモロコシ)の量が6~20㎏必要であることがその理由です。世界の穀物生産量は約27億トン。世界人口78億人で一日一人当たり2,348kcalに相当する穀物が生産されており理論上は飢餓が無い世界が実現できる水準になっている。しかし、世界の穀物生産のおよそ1/3は「肉」を生産するために家畜の飼料に費やされている。「肉」の生産に必要な大量の穀物生産を維持するために森林破壊が進み、それが「水」に大きな影響を与え、大地に異変が起きている。地下水の枯渇が世界各地で現実的な問題となっている。全世界の水資源の7割は農作物の生産に使用されていて、水資源が枯渇しようとしている最大の要因が「肉」の大量消費である、という説明です。

 

「バーチャル・ウオーター」という概念で食料を「水」換算すると、牛肉1㎏を輸入する=穀物6~20㎏が必要=15,415リットル(ℓ)の水に相当するそうです。日本は年間80兆ℓのバーシャル・ウオーターを輸入している計算になり、これは日本の水の消費量に等しい量になる(桁が大きすぎて全くピンと来ませんが)。水資源の管理は、従来「ローカル」な問題と見做されていたが、これこそは「グローバル」な問題であると。ごもっともな指摘だと思いました。

 

 

●「食料システム」の歪みをもたらした要因の一つが「単一品種、大規模栽培」「農薬と化学肥料の大量投入」の農業であると強調されています。これにより食料の「生産国」と「消費国」が切り離された。現在、食料の輸出は20か国に独占されている(「独占」という表現よりは””20か国に「集中」している””のほうが妥当と思いますが)。「肉」の飼料の代表であるトウモロコシについていえばより顕著で、トウモロコシの世界の輸出の75%は5か国に集中しているとのことです。

 

「単一品種、大規模栽培」の歪みは、カカオ、パームヤシ、サトウキビの農園でも顕著。農園の拡大⇒小規模・零細農家の減少⇒失業、低賃金労働。また、熱帯雨林の破壊につながっており、さらに、農園の拡大により従来の農作物栽培が出来ない=自給が出来ない=飢餓の恐れに繋がっていると。

・・・大豆・トウモロコシ、パーム油等々、現役の時にこの仕事に携わっていた者としては、この辺りの議論の進め方には反論したいところもあるのですが。「緑の革命」のプラスの意義は大変に大きいモノがあった訳だし(その反作用が大き過ぎるのも確かですが)、現代の「農園」では病院、学校、衛生的な住居の提供が行われており近隣住民の生活向上にも大変に寄与しています。

 

また、世界の温室効果ガスの排出の約1/4は「食料システム」が原因だそうです。地球温暖化がますます進んでいること、深刻化していること、そして気候変動の頻度(洪水と干ばつの繰り返し)のリスクが高まっていて食料危機に繋がることが繰り返し紹介されていました。

とにかく、「飽食(贅沢)が大問題。美味しいモノをたくさん食べたい、という人間の欲望そしてその食生活。肥満人口が20億人いる一方で栄養失調の人が20億人いる。現在の食料システムは本来、飢餓を無くそうという目的に合致しないものになってしまっている(食料問題の研究者の総括)」

 

更に、このままの状態が続いて行けば、食料危機が地球規模で社会的な混乱に繋がっていくことが指摘されています。レバノンの現実の状況として、国家財政悪化・通貨の下落・極端なインフレにより、もともと食料自給率40%で輸入により豊かな食生活を送っていた国で食料価格が大幅に上昇。モノはあるのに高価過ぎて買うことが出来ない。飼料が輸入出来ないから肉・卵の生産が出来ない。市場で卵を奪い合っている様がレポートされていました。レバノンの食料自給率は日本とほぼ同じくらい低い水準ですから、そういう国が陥るリスクに警鐘を鳴らしているものでしょう。

 

 

●解決策が模索されています。

①持続可能な農法で生産性を高める工夫をすること、②生態系、熱帯雨林を守ること、③食生活を改善して食料需要を減らすこと、食品ロス・廃棄を減らすこと、④農地の回復を図ること。

世界銀行のアナリスト、国連WFPの事務局長の話では、食品ロス・廃棄は、世界の穀物生産の1/3に相当する量とのことで、生産国では畑から市場に出る間に、消費国では食卓にて、それぞれおよそ1/3の無駄が発生しているとのことでした。

 

スウェーデンで開催されているEATフォーラムでは「プラネタリーダイエット」が提唱されている由。食料システムを見直して食料資源の偏りを解消する、食生活を変えよう、そういう食事の推奨です、

「野菜・穀物と豆を中心とする食生活に。先進国では肉の消費を8割削減する。そして、肉の生産に使用されている穀物を貧民層に回して偏りを解消する。そうすれば、地球を守りながら100億人を養える」というものです。

 

解決策は「肉の消費を減らす」「持続可能な農法」「食品ロスを減らす」が骨子のようです。具体的な取り組みの事例が紹介されていました。

アメリカでの人口肉の開発。大豆を主原料とした「肉」です。味、食感はもはや料理のプロが試食しても分からない出来栄え。人工肉は、水の使用を87%減少させ、温室効果ガスを89%削減できるそうです。

・ガーナでの不耕起栽培。大地の力を引き出す農法です。下草カバーの土壌改善効果を重視。農薬、化学肥料無しで30%以上の増産が可能になっている。小規模農家の復活が進み、食料の不足は無くなり余剰作物を市場に持ち込んで現金収入も得られていると。

アメリカでの食品ロス削減運動。廃棄される農作物、食品を大規模に回収し再分配する。大学生が主導しています。鍵は輸送手段のようです。

 

「SDGs達成は大変に難しいこと、食生活を変えることも大変に難しいことであるが、今の『食料システム』のままでは、地球規模の食料危機が間違いなく起こる。そして、残された時間は少なくなってきているが2030年までの10年間で、それを避けるために出来ることがある、持続的な繁栄の道はある」ことを強く訴えられていました。

 

 

全般的に””国・政府レベルでの行政施策を通じて目標を達成していく、改革を行っていく””というよりも、””現場での個々のレベルでのやり方・考え方を変えること””で解決策を見出していこうとするような印象を受けました。これらの施策で充分なのかしら?、という印象を持ちました(・・・今のコロナ対策に対する不満足感のような?主体はそもそも異なっているのは分かっているのですが)。

スウェーデンのフォーラムの様子を見ていると、””民間の個々人の有意の活動が賛同・支持を得てネットで広がり大きな世論が形成され、その世論の支持を得られない政権は淘汰、排除される。民意に賛同を得られない政策、行政は排除される””ということを前提に考えているような。世界では、そんな考え方が当たり前の流れになってきているのですかね。

 

ちょっとオチョクって言えば、今のうちに肉を食べておこうと受け止めるか、一汁一菜の日本の和食生活に回帰しようとするか、重大な分岐点かも知れません。間違いなく言えることは、食品ロスはホントに無駄だと思います。可能な限り少なくするように努力したいものです。

 

 今朝のNHK中部のニュースで、三重県の若い農家さんの「節水農法」が紹介されていました。ハウス栽培のトマトですが、湿気を保つ膜(繊維)を土の代わりに使うそうです。水の必要量を大幅に抑えることが出来て、根が丈夫に発達してトマトの糖度も高くなる。旨い!と。海外からの視察も絶えないそうです。こういう農園がもっと儲かるようになったらイイですね。

そもそも、日本の水田でのお米作りは自然にも優しく人間にも優しいものだと信じていますが、もっと、日本のお米作りが「持続可能な農法」であることをアピールすればよいのにと切に思います。

 

 

2030年には80歳、2050年には100歳です(生きていればですが)。100歳になった僕が見る日本と地球はどうなっているものでしょうか。故橋本治さんにまた小説を書いてもらいたいような・・・。

 

 

 

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「SDGs達成」を少しは気にしながらも能天気に料理を楽しんでおります。

左;農園で収穫したスナップエンドウを使って。スナップエンドウ、トマトと卵炒め。味付けに出汁つゆを加えました。上出来!。スナップエンドウが沢山あったのでこの後三回も作りました。自分で収穫したのは少しだったのですが、仲間が分けてくれました。感謝です。

右:手羽元の黒酢煮。バーミキュラ鍋で。ネギ、ショウガを加えて。柔らかく出来ました(器に移してからフライパンのタレを上からかけておくべきであったと反省してます)。ニワトリはバーチャルウォーターの使用量は少ない(多分)なんてことも考えたり(…してないですね)。2021年5月6~9日、料理と撮影。