クルルのおじさん 料理を楽しむ

『自省録』

五月の後半から『自省録』を買って読んでいましたが、漸く、最後まで目を通すことが出来ました。マルクス・アウレーリウス『自省録』、神谷美恵子訳。岩波文庫、2022年3月第27刷。マルクス・アウレーリウスはローマの哲学者で皇帝。121年生れ、180年に没。今から約1900年も昔の方です。---「生きているうちによき人たれ」、重責の生のさなか、透徹した内省が紡ぎだした言葉は、古来数知れぬ人々の心の糧となってきた‐‐‐と文庫本のカバー裏に記載されていました。

 

前回、記載した通りですが、神谷さんは21歳の時に肺結核を患い療養している時にギリシャ語を独習。新約聖書マルクス・アウレーリウスの本を原書で読破したと。その後、神谷さん35歳の時、1949年に「自省録」を翻訳出版、1956年に岩波文庫版に収められたそうです。

 

巻末には訳者解説が記載されていました。全22頁に及びますから解説というよりも論文という方が適切と思えるくらい。1.マルクス・アウレーリウスの生涯、2.『自省録』の思想内容について、3.『自省録』の構成、文体その他について、の三部から構成されています。2.ではマルクス・アウレーリウスが深く傾倒したストア哲学について、その概要が纏められています。ストア哲学・思想の限度(限界)を指摘しながらも「それにマルクスの魂が乗り移るとなんという魅力と生命を帯びることであろう」と。それは「彼がこの思想を身をもって生きたから、生かしたから」「マルクスは書斎人になりたくてたまらなかった」が「皇帝として現場との対決に火花を散らす身であったからこそ、その思想の力と躍動が生まれたのかもしれない」。

 

神谷さんがこの本を読んで大変な影響を受けたと感じさせるクダリが沢山ありました。僕も(今更ですが)ハッとしたクダリを紹介しておきます。

●「君の全生涯を心に思い浮かべて気持ちをかき乱すな。どんな苦労が待っていることだろう、と心の中で推測するな」「それよりも一つ一つ現在起こってくる事柄に際して自己を問うてみよ」---第8巻‐36.

●「現在の時を自分への贈り物として与えるように心がけるがよい」---同‐44.

 

この本の原題は「ta eis heauton」=「自分自身に」とのことです。「元来人に読ませるつもりで書いたものでは無い」(訳者序)。約1900年も前にこんな本を書いた人がいたこと、その本(写本)が残されていることに敬意を表したいと思います。更に、その本の言語を独習してそれを原書で読みこなし、後に精神科医、母親として超多忙な生活のなかで翻訳出版された神谷美恵子さんに改めてエールを送りたいと思います。

 

以上の通り、本屋さんで偶然にこの本に出合ったことを嬉しく思っていたのですが、文藝春秋の今月号(7月号)を見てビックリしました。「『ミステリという勿れ』と『自省録』」、田村由美さんの記事が掲載されていました。田村さんはマンガ家で『ミステリという勿れ』は彼女の代表作の人気マンガ。この中に『自省録』が登場して、その言葉が多々引用される場面があるそうです。このマンガがキッカケになり『自省録』が話題になり岩波文庫が大増刷したとか。TVドラマ化もされており増刷版の表紙には、このマンガ・ドラマの主人公の写真と「『自省録』が大きな鍵に!」というキャッチコピーも付けられたものがある由。

 ちなみにこれは僕が買った文庫本の表紙です。ドラマは今年の一月から始まって三月頃には終了したようです。僕の買った文庫本は2022年3月の第27刷でしたから、更にその後も増刷が続いているのかも知れません。前回、この本のことを書いた時に「本屋さんで面陳列されて置かれていました。---マルクス・アウレーリウスの自省録そのものの魅力に加えて今も変わらぬ神谷さんフアンが多いことの証明だと思います」と書きましたが、それだけでは無くてこのマンガとドラマの影響が大きくて増刷されたもののようです。

 

数年前(多分)に、吉野源三郎さんの「君たちはどう生きるか」がマンガ化されて大変な評判になり、吉野さんの原書も大増刷されたことが話題になりました(この本も岩波文庫でなかったかしら)。マンガをきっかけにして原典、原書を読むことになるのもいいことだと思います。若い世代の方々がそれなりの分量のある一冊の本を最後まで読み切る習慣を持つことは大切なことかと。

 

 

(話題が全く変わりますが)小雪チャンがピアノのレッスンを開始した、と長男から連絡がありました。長男一家のマンションから歩いて行けるピアノ教室。送り迎えにイロイロと制約がありますから便利な場所にあることが大きな要因になります。良い先生に恵まれることを祈りたい。僕の方もピアノレッスンを真面目に継続しています。アラタくんももうすぐピアノの発表会があると聞きました。孫たちとそのうちに連弾出来れば楽しいだろうなあ。

 

僕のピアノ教室は「ピアノサロン心音」ですが、ピアノのレッスンだけでは無くて1月に新年会をやって頂いた後も折に触れて他の仲間も加わっての懇親会=飲み会を続けてもらっています。「”心音”先生」に就いてからこの4月で三年目を迎えるので三年目記念の夕食会をやってもらったり、5月には「ピアノ会」が開催されてその最終日、恒例になった打ち上げ飲み会をやってもらったり(ドラゴン先生も連続参加、すっかり主要中心メンバーです)、更に、5月21日には新しい生徒さんの誕生日祝い兼歓迎会をやったり。楽しく有難い限りです。

 

新しい生徒さんは僕より10歳ほど年長さんで有名な画家先生です。旦那さん(旦那さんも高名な画家先生)が亡くなられてからも絵画教室を主宰されています。今も現役の画家かつ絵画教室の先生をされているスーパーレディ(以下、このブログでは”ミターさん”ということで)。「ピアノサロン心音」のピアノ会の常連メンバーの一人ですが、昨年末のピアノ会の時、心音先生の演奏を聴いていた時に”自分でもピアノを弾いてみたい”と感じられた。準備を整え(娘さん宅の使っていないピアノを自宅に移動して、自宅の応接間に手を加えてピアノの練習がゆったりと出来る環境を整え)この春からレッスン開始。

 

心音先生によれば”芸術を一つ極めた方というのはやはり素晴らしいモノを持っている”、”ミターさんの練習振り、集中力は凄いもの”であると。

誕生日会の時には「絵は何度も何度も(自分で納得できるまで)手を加えて完成させることが出来る。そして、その完成させたものを皆様に見せることが出来る。ピアノは演奏会のその時の一回が勝負!。発表するときのその瞬間が怖いと思います」と流石に画家先生としての含蓄のあるコメントが出てきました。心音先生も「レッスンを開始早々に発表会のことをイメージしているところがさすがにミターさん!」と感心、ビックリされていました。

 

 ミターさんのお誕生日お祝い会のお品書き。「貝合わせ風最中」「菊花しらあえ」「サラダ」「野菜のバルサミコ酢」「ローストビーフ」「貝柱とアスパラ炒め」「新じゃがいも煮」「手巻き寿司」「野菜のしょうゆこうじ漬け」「焼き魚」‐--飲み物---「バースデエーケーキ」(5月21日撮影、ピアノサロン心音)。いやはや大変にお手数をおかけしました。美味しくご相伴に預かりました。感謝、感謝。

この誕生日会はミターさんと心音先生ご夫妻と僕の四人でしたが、ご主人を含め三人が心音先生のレッスンを受けています。ノリノリのミターさんが加わり大変に盛り上がり、生徒三人の発表会をやろう!ということに。半年後から年末までに発表会をやることになってしまいました。どう見ても僕が一番、本番に弱そうです。今から手が震えそうです。

年初から「太陽がいっぱい」を練習していました。あのアランドロンが一躍有名になった映画のテーマ曲。僕の年代の人ならまず知っている曲でしょう。ほぼ半年間の練習後、前回のレッスンでOKを頂きました。次回からは新しい曲に挑戦です。アウレーリウスの金言を噛み締めて「今」を大切にしたいものです。

 

 

日経・俳壇、6月18日。

黒田杏子選。

   野良犬の犬歯や朱夏ウクライナ

   蛇穴を出でてこの世の戦みる

横澤放川選。

   プーチンへ送る一鉢きらん草

 

野良犬の句。評に「映像でごらんになったウクライナの野良犬の犬歯。一瞬を切りとる俳句の力」と。

きらん草の句。同じく評に「『別称ジゴクノカマノフタ』と言いたいのである。文字取り毒気をしこたま含ませた忿怒の一句だ」とありました。句の意味を100%理解出来ていないかも知れませんが、きらん草が可哀そうな気もしました。

 

 

おまけです。えらぶユリの写真です。

    

 

      

 

   

沖永良部島のユリです。以前の会社の関係でお付き合いがあり球根を頂いています。仲間にお裾分けしたら、皆さんキレイに育ててくれました。今年は特に花がキレイに咲いているように思います。

 

コロナは新規の感染者が減少傾向から下げ止まり、反転増加しそうです。引き続き、皆さまくれぐれもご自愛くださいませ。