クルルのおじさん 料理を楽しむ

5月の終わりに

 

オモト(万年青)の新芽があっという間に大きく育っています。クルクルと丸まっていたのが開き始めてきました。前々回のブログに掲載した写真から20日ほど経過。毎日、伸びているのが見ていて分かります。楽しいのでほとんど毎日写真を撮っています(この写真は5月29日に撮影)。

 

NHK朝ドラの主人公、牧野富太郎さんの紹介番組をやっていたので録画して見ました(スミマセン、朝ドラの方がは見ていません)。集めた標本は40万点になるとか。植物のスケッチが紹介されていましたが、それはそれはキレイな精密なものでした。成長に連れて変化していく様が丁寧に鮮やかにスケッチされていました。今なら写真、ビデオで簡単に撮れますが、当時の観察の大変さ、その記録の貴重さがよく分かります。ほとんど芸術品の様な記録です。”世の中に雑草という草は無い”というのは昭和天皇がおっしゃった言葉だと思っていましたが、これは牧野さんの言葉のようです。天皇とも大変にご懇意にされていたそうで、天皇がことあるごとに”牧野は元気にしておるか?”と気遣われていた由。写真で見る笑顔が大変に素晴らしい。解説の方が”大好きなことを楽しんでいる方の表情”と言っていましたが全く同感です。もっと歳をとっても牧野さんのようなイイ表情でいたいものです。牧野さんは1957年、94歳でお亡くなりになったそうです。

 

同じ植物学者の方の活躍を描いた本を読みました。「食卓を変えた植物学者---世界くだものハンティングの旅」、ダニエル・ストーンさん著。築地書店、2021年5月初版。主人公のディビット・フェアチャイルドさんは19世紀末から20世紀初めにかけてアメリカには無かった数百種類の植物(野菜、果物)をアメリカに持ち込んだ植物学者、冒険家(1954年、85歳でお亡くなりですから、ほとんど牧野さんと同世代の方)。世界を股にかけて未知の植物を探索した冒険物語で楽しく読めますが、当時の植物採取のやり方のいい加減なことに驚くことがたくさんありました。世界各地で見つけた珍しい植物の種や挿し穂を(ある意味)ほとんど勝手にアメリカに持ち帰っている。自然に植わっているものであれ農園・畑で栽培されているものであれ(ほとんど、全く)お構いなし。およそ100年前の世界はこんな状態であったのだ、と驚きました。

もう一つ驚いたのは「検疫」の概念。当時、海外から植物を受け入れる際にアメリカでは輸入植物検疫の概念がほぼ無かったようです。晩年の面白い逸話が紹介されていました。有名なワシントンのポトマック川河岸の桜並木の造成に主人公が大きく関係しているのです(主人公は日本が好きでとりわけ桜が大好きであった)が、日本からの桜の木(約二千本)を持ち込んだ際に害虫がいることが分かってしまい一旦は二千本全部が焼却処分となった由。この頃になると漸く輸入される植物の検疫の必要があることが指摘されていたからですが、この検疫制度の旗振り役をしたのが主人公の幼馴染の昆虫学者であったとか。時期が時期だけに(1910年前後の話です)危うく日米の外交問題に発展する懸念もあったらしいですが、日本からもう一度、万全を期して送られた桜は無事に検疫を通過したそうです。お陰で両国の関係を傷つけることがなく親善を深めることが出来た由。

 

前回のブログで記載した愛知県陶磁美術館に行く時に利用するリニモの二つ目の駅に「はなみずき通り」という名前の駅があるのですが、「はなみずき」というのはアメリカ原産の木です。そして、日本に初めてハナミズキが持ち込まれたのが、このワシントンの桜の返礼にアメリカから贈られてきたものだそうです。その時にアメリカから持ち込まれたハナミズキは現在ではほとんどがダメになってしまったとのことですが、日本での人気は根強く各地に街路樹として植えられることになって現在に至っていると。

僕の隠れ家は名古屋市千種区ですが、鯱城学園の千種区の集まりは「花水木鯱城会」という名前です。当然、ハナミズキ千種区の花だからと思っていたのですが、先日、リニモに乗っている時に仲間から「千種区の花は『アジサイ』である」との指摘がありました。「それでは何故、『花水木鯱城会』なのかい?」と訳が分からなくなりましたが、調べてみると何のことは無い「(千種区の)花はアジサイ、(千種区の)木がハナミズキ」と花と木を分けて定めていました。ハナミズキの花の様に見えるのは花では無くて、その内側に咲いている目立たないのが花だそうですから、千種区の「木はハナミズキ」という言い方も核心をついているのですかね。

 

 

NHK俳句です。5月第三週、選者は村上鞆彦さん。ゲストには歌手の加藤登紀子さん、我々の世代には大変に懐かしい方。俳句はお家で俳句の会を続けているとか、フアンクラブの方が俳句の冊子を発行していて、それに年間六句だけ寄稿しているから「六句俳人」と呼ばれているとか、とにかく長年お付き合いがあるようです。司会はいつもの方ではなくて女性のアナウンサーの方がされていました。

この週の年間テーマは「人生を詠う」ですが、今週は「幼少期」。番組で紹介された幼年期のイメージの句です。

   おとしだまうちゅうりょこうへためておく   北川大翔

   少女みな紺の水着を絞りけり   佐藤文香

「おとしだま」の句は当時小学二年生くんの作とか。芭蕉は「俳諧は三尺の童にさせよ」と語ったそうですが、まさにその通りの面白さ。今週の兼題は「若葉」、特選三句です。

一席   給食が大好きな子よ若葉風

二席   若葉風ギターの弦を張り替えぬ

三席   けふ返事書かうと思ふ若葉かな

投句のなかで登紀子さんの指摘が面白いと思った句です。

   ただいまの声澄み切って夕若葉

登紀子さんは「の」を「と」に変えてはと。

   ただいまと声澄み切って夕若葉

選者の鞆彦さんも「”ただいま”が立つ(際立つ)ことになる」とコメントしていました。

 

第四週は引き続き「句合わせ」で、チーム対抗のディベート合戦、俳句バトルだそうです。判者は高野ムツオさん。司会はこの週も女性のアナウンサーさんでした。僕は(前回も記載しましたが)この「ディベート」なるものにどうも違和感を感じているので記載は省略です。ムツオさんの真摯な採点振りとゲストの方が「(それぞれの句について)話し合いをすることが出来たのが楽しかった」と語っていたのは印象に残りました。

今週の兼題は「夏の風」、特選三句です。

一席   夏風や知覧に残る兵の文

二席   グローブも帽子も投げて夏の風

三席   タヒチから手紙窓から夏の風

ムツオさんが説明していましたが、夏に吹く風のことは「南風(はえ)」「薫風」等々いろいろな表現があるが「夏の風」は極めて一般的な言い方、だから句に織り込むのは逆に難しいとか。手元の歳時記を調べてみたら「夏の風」と言う季語はありませんでしたが”夏に吹く風”については時期、場所によって「あいの風」「やませ」「黒南風」「白南風」「ながし」「青嵐(あおあらし)」「風薫る(薫風)」とイロイロな表現が記載されていました。難しいですね。

ディベート」ですが、ゲーム感覚で勝ち負けを競うというのは面白いのかも知れませんが、その分、理屈が多くなったり(句の意図を)押し付けるような説明になったりするのはどうもいただけないような。これは(ディベートという)やり方の問題でなく出演者の性格に依るものですかね。

第一週から第三週には「ゼロから俳句」というコーナーがあるのですが、「夏井家伝授」と称して夏井家の初心者向け俳句作りのノウハウが披露されています。初心者向けの俳句の作り方教室。「尻から俳句」というやり方を紹介されていて、「その日に見た五音のモノを下五に置く。その説明を中七に入れる。その後で似つかわしい季語を上五に置く」というやり方(のようです)。これは「ゲーム感覚」ならぬ「パズル感覚」かと。パーツを埋めていく作業をやっていけば一句出来上がり!?。夏井いつきさん方式の俳句教室が最近の主流を占めているようですね(ブツブツ言ってないで素直に拝聴を続けたいと思ってます)。

 

日経俳壇の4月からの選者は亡くなられた黒田杏子さんのあとは神野紗季さんですが、面白い句を選ばれているので楽しく拝見しています。5月27日の日経俳壇で、もう一人の選者である横澤放川さん選の句を見て驚きました。

   それが今なら蒲公英を柩にと   (日経俳壇の句、横澤放川選)  

NHK俳句の投句で紹介されていた句と同じや!”と思い調べてみたら、4月第一週で夏井いつきさんが特選に取った句でした。少しだけ違っている。

   それが今ならば蒲公英を柩に    (NHK俳句、夏井いつき選)

同じ作者が別な投句先に句を少し変えて投句したのかと思ったのですが、ナント作者の名前、地域名が同じではありませんでした。嫌な気分になってしまいました。今ごろ日経俳壇にはクレームが殺到しているかも知れませんね。

 

一方では俳壇の神野さん選と歌壇の穂村弘さん選の両方に同じ方が選ばれていました。凄い方がいらっしゃるもんです。横須賀の丹羽利一さん。俳壇では何回も拝見していた方ですが、歌も作られているんですね。”アッパレ!”、こちらは気分が和みました。

   この円さ古墳と知れば暖かき   丹羽利一

   当てられしビー玉走り止まりたり影の芯には日が点となる   丹羽利一

眼が見え難くなっているので最初に読んだ時には「目が点となる」と読んでしまい、一人で苦笑いしておりました。益々のご健闘をお祈りしております。

 

そう言えば、選者の神野紗季さんは松山東高校在学中に俳句を始め、俳句甲子園で団体優勝された方です。夏井さんの仕掛けから生まれた俳人と言えるかも。夏井流の活動でドンドンと才能が開花している、ということかも知れませんね。

 

駄句です。

   手び練りの花器に一輪夏の風   孔瑠々

   一時間歩いて汗を夏の風   孔瑠々

 

 

本日のメインエベントです。久しぶりにタカトくんの絵(の写真)を見せてもらいました。

タカトくん、三年生初めての作品。学校の授業で描いたそうです。カミさんが写真を撮って送って来てくれました。チョット撮影が雑なのが残念。ホンモノを見に帰りたいです。