クルルのおじさん 料理を楽しむ

『英語の俳句』

 12月4日(土)、久しぶりに神戸に。JR摩耶駅の近くの画廊で開催されていた「英語の俳句x木版画:二人展」を見に(観に)行きました。この「二人展」の趣旨ですが、案内状に記載されている文章が最も分かり易いと思いますのでそのままに記載させて頂きます。

 

「定年退職した旧友二人の戯れの作品展です。日々感じたこと、訪れた地で出会った小さな出来事、移りゆく季節への思いを英語の俳句と木版画にしました。本当に本当に拙く小さな作品ばかりですが、観に来ていただいた方々が『ちょっぴりハッピーな気持ちになった』と感じていただければ望外の喜びです。」

 

 お二人とも神戸大学の教授だった方です。定年退職の後、お一方は「英語の俳句」に興味を持ち、もうお一人は「木版画」を楽しむようになった。もともと仲の良かったお二人ですが ”いつか二人の作品展をすることが出来れば楽しいねえ” と語り合っていたそうです。英語の俳句と木版画を組み合わせて作品を作り上げる、というコンセプトに二人とも甚くハマっていた由。長い間、教授として新しい研究と学生の指導に尽力してきたお二人ですから、自分達の趣味の世界に於いても ”新しい”分野 での作品を作り上げることに面白みを感じた由。これは「木版画」のおじさんから聞いたお話ですが、確かに二人とも自分達が先駆者の分野であれば自由に気ままに作品を制作出来ることを楽しんでいたのであろうと感じます。

 

 大変に残念なことに二人が作品を制作し始めてから二年も経たずして「英語の俳句」のおじさんが他界されてしまいました。病気が見つかってから3~4カ月でのご逝去。まさにあっという間の出来事だったそうです。2020年4月のことです。2020年4月7日には七都道府県で、4月16日には全国で非常事態が宣言された時ですから、まさに日本中がコロナで大騒ぎしている時でした。「英語の俳句」のおじさんと僕は大学のゼミの同期です。当時は彼の訃報の連絡を受けても何の対応もすることが出来ない、何かすることが憚られるような状況でありました。

 

ゼミの同期会のことはこのブログで何回も記載しています。

kururupapa.hatenadiary.jp

2019年10月後半の同期会の記事です。翌年(2020年)の企画も決めていたのですが、コロナ騒ぎで中止・延期になって現在に至っています。この中で出てくる「ピアノ教室のD君」が「英語の俳句」のおじさんです。この時はそれまでと変わらずにお元気でしたから、このゼミ旅行の後、年を越してから体調を急速に崩されたことになります。

 

kururupapa.hatenadiary.jp

その前年の2018年の同期会。この同期会はD君が幹事役をしてくれていました。この時には、D君とイロイロと話し込んだことを思い出します。ピアノ教室のこと、イタリア語を勉強していること、そして、単身のイタリア旅行を計画していること。

 

今回の二人展の中にも2019年2月に彼がイタリア、フィレンツェを旅行中に詠んだ作品が展示されていました。一句、ご紹介します。

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「旅の記憶Ⅱ、イタリア旅行フィレンツェ」、

   herb scents

   two cats in the kitchen

   approaching dusk

   フィレンツェの料理教室猫二匹

2019年2月、ハーブの香りする夕暮れのキッチンにて(ロートレックへのオマージュ)。

 

木版画も英語の俳句もそれから英語のスペリングにも味があるなあと感心しています。英語俳句と木版画の作品は2018年9月から2020年2月までの全15作が展示されていました。

木版画」のおじさんはD君の三年ほど後輩になるのですが、D君と話した「二人の作品展」のことをずっと温めていたそうです。没後、暫くしてご遺族も世の中も少しは落ち着きを取り戻した頃、D君の奥様のご意向も確認しつつ今回の「二人展」の開催を企画して今回漸くに実現することが出来たそうです。後輩、エライ!、エールを送りたいと思います。

 

「二人展」には同じゼミ同期の仲間と二人で行きました。D君の自宅は大学のある六甲台の一角にありD君の奥様が快く了解して頂いていたので二人でご自宅にご挨拶に伺いました。お元気にされているのが何よりだと思いました。たまたま娘さんとその息子さん=D君のお孫さんも立ち寄られていました。快活な娘さんと立派なお孫さん、挨拶することが出来て嬉しく思いました。しっかり者の奥様(D君からは”頑固モノ”と言われていた由)ですが、昔の懐かしい写真を見せて頂き当時の思い出話を伺うにつれ目には涙。一緒に行った仲間がしっかり者で会話をリードしてくれましたので大変に助かりました。ご自宅にまで押し掛けてご迷惑をかけたかと申し訳ない気持ちもありましたが、帰路は二人で”やはり、お伺いして良かったなあ”としんみりと話合いました。

 

D君、D君と記載していますが、実は僕からすると同じ高校の一年先輩にあたります。大学では同期です。本来はDさんと記載すべきところでしたが「同期会」の文脈のなかでしたので、ずっとD君と記載を続けていました。先輩にして仲間のDさんです。改めてDさんのご冥福をお祈りしたいと思います。

 

 

「英語の俳句」のあとでルーティーンのNHK俳句です。不釣り合いかも知れませんが、相変わらず僕の備忘録です。簡単に記載します。お付き合い頂ければ嬉しいです。

 

11月の第三週です。司会は中田喜子さん、選者は岸本尚毅さん。ゲストは芸人のマツモトクラブさん。今週のテーマは「擬人法と想像力」。山口誓子の句を例にとって説明がありました。良い句だと思いました。

 

   海に出て木枯帰るところなし   山口誓子

 

テキストに面白い説明がありました。晩年の虚子は、俳句を語る時「天地有情」という言葉を用いたそうです。尚毅さんは、この天地有情はアミニズムに通じると解釈しています。俳句の根っこにアミニズムがあると考えれば、アミニズムと相性が良い擬人法は俳句の本質的な一面だと。何か分かるような気がしました。テキストにあった虚子の句です。

 

   天地の間にほろと時雨かな   高浜虚子  (天地=あめつち)

 

「ほろ」には「涙の落ちるさま」という意味もあるそうです。

今週の兼題は「木枯」。特選三句です。

 

一席   木枯しは嬉しく辛し芋を干す

二席   木枯しや日なが湯に入る園の猿

三席   木枯を逃げて楽しむ高島屋

 

面白いと思った句です。

     木枯しや誓子行方を見守りて

冒頭の誓子の句に対する挨拶句と鑑賞されていました。岸本教官の添削道場は割愛します。

 

 

第四週は「NHK俳句部」。塚地武雅さんが部長、今週の部員は田中要次さん。俳句部顧問先生は櫂未知子さん。今週の兼題は「おでん」。各地のおでんが紹介されていました。関西風はタコ/牛すじ/ごぼう。長野県は長ネギと紅しょうがのタレで頂くとか。北海道は昆布だしでシラコ、ホタテが特色とか。写真パネルでの紹介でしたが、どれも美味しそう。部員さんへの宿題にも「おでん」が入っていましたが、今回は良い句がたくさんあったように感じました。点数も高得点でした。

生徒さんの宿題の句です。面白いと思った句。

   ふうふうと八回吹いておでん食ふ   塚地武雅

   うどん屋上着忘れて小春かな   同上

   屋台よりおでんの湯気の手招きか   田中要次

   立つ湯気に涙忘るるおでんかな   いとうまい子

   軒下の夕日に染まる干菜かな   いとうまい子

   おでん屋の灯り連なる中洲かな   櫻井紗季

塚地さんの「うどん屋」の句とまい子さんの「干菜かな」の句は9点を取っていました。部員のレベルが一気に向上したような。投稿句の大賞は、

   夕星の光りおでんの匂いけり

夕星(ゆうづつ)というのは金星(宵の明星)のことだそうです。

今週のテーマは「美味は幸せ」。「食べ物(の季語)が作品の中心になる」という点からも俳句はユニークだと。これはその通りかと思います。

 

   鯛焼は鯛焼同士ぬくめ合う   大牧広

 

大牧さんは櫂さんの俳句の師匠だそうです。

素材を加工した季語はたくさんあるそうです。「鮭」は秋の動物の季語、それが「塩鮭」になると冬の生活の季語になる。「猪」は秋の動物の季語、「猪鍋(牡丹鍋)」になると冬の生活の季語になると。面白いですね。とにかく、食の季語を用いる場合は「できるだけおいしそうに詠みましょう」と記載されていました。その通りですね。

 

今回の俳句ドリルは、「〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇山眠る」。紗季さんの句が取られていました。

  薪割りの心地よき音や山眠る   櫻井紗季

 

添削の例

原句  ぴいぴいと薬缶が鳴りて山眠る

添削  ぴいぴいと笛吹ケトル山眠る

「山眠る」が動詞なので一句のなかに動詞を詰め込まない方が良いとのことです。

 

ちなみに

冬は「山眠る」、春は「山笑う」、夏は「山滴る」、秋は「山装ふ」と春夏秋冬の季語があるそうです。何れも動詞なので詰め込みに注意ですね。

 

12月に入り季節並みの寒さになってきました。引き続き、皆さま、くれぐれもご自愛のほど。