クルルのおじさん 料理を楽しむ

1950年生れ、その2.

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 雨上がりの平和公園。新しいマンションから公園の入口まで徒歩5分。最初の坂を登ったお気に入りの場所。今日は会社をお休み。用事が午前中に早く終わったので、昼からのんびりと散歩。引っ越ししてから初めて平和公園ウオーキングです。名古屋市千種区。2018年4月19日撮影。

 

 

面白い本を紹介してもらいました。

「東大入試中止1969、ある受験生カップルの軌跡」、大坂谷吉行さん著。ご本人が発行者、いわゆる自費出版の本です。

 

僕が昔務めていた会社(=関西系の総合商社)の同期会のネットワークがあります。皆さん会社務めから引退・解放されて悠々自適の生活?を送っている方々がほとんど。一部の方はまだ現役生活をされています。同期会として飲み会、ゴルフ会を数か月に一度は催しています。幹事がいわゆる自然体の方で、彼の存在がこの会が上手く運営出来ている大きな要因だと思っています。懇意にしている友人からこのネットワークでこの本の紹介がありました。

 

僕たちの年次は昭和48年入社なのですが、この年に大学を卒業した方々のほとんどが大学入学した時=昭和44年=1969年が「東大入試中止」の年です。この本はこの東大入試中止をテーマで書かれている小説です。時代環境がまさに自分達そのものですから件の友人からは「きっと懐かしみを覚えながら読める」本との紹介のコメントが添えられていました。

 

早速、注文しようとしたのですが、これは自費出版されている本。ネット注文でも引っかからない、行きつけの本屋さんでも取り扱っていない。紹介してくれた友人に聞いて著者のメールアドレスを教えてもらいました。こんな注文の仕方は初めての経験です。

 

メールの返信が無かったので手に入れるのは難しいのかと諦めかけていたら、数日経ってから本が郵送されてきました。結構、簡単・便利なものです。自費出版という出版のやり方もネットの利用が便利になったおかげで、もっと、盛んになるかも知れませんね。但し、支払いは本を受け取った後で銀行振り込みにて行いましたが、発行者からすると代金回収のリスクというのは覚悟しなければならないのでしょうね。

 

 

著者は、大坂谷(おおさかや、と読みます。珍しいお名前です。)吉行さん。当然、1950年生まれです。札幌市生まれで、札幌市立美香保中学校、札幌南高校を卒業。大学入試の時に「東大入試中止」となり進路を大きく変更して北大建築工学科に。卒業後に東大大学院都市工学課程に入り修士および博士課程を修了。現在は、室蘭工業大学名誉教授、工学博士。自ら”バイリンガル作家”と謳われていました。

 

著者がこの本を書いたきっかけは、学生さんとの会話のなかで、ほとんどの学生がかつて東大入試中止があったことを覚えていない、乃至は、かなりの学生がそもそもそんな事があったことすら知らなくなってきている。そう感じているときに、後輩に当たる東大の学生との会話で「東大入試中止は、東大の公式HPに記載されていない」という事実を知ってしまった。著者なりに思うところがあって、東大本部広報課に「意図的な隠蔽ではないか?」と厳しく問い合わせたと。

結果、2018年1月19日から、東大のHPの「沿革」欄に、「昭和44年1月 昭和44年度入学試験の中止を決定」との一行が挿入されたとのことです。 著者としては、この入試中止を自分なりに書いたもので残しておきたいという気持ちでこの小説を自費出版された由。

 

 

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この本の表紙です。何ともセンスを疑ってしまうような表紙ですが。昭和の時代の貸本屋にあった三文漫画を思い出すような。そうなんです。思い出しましたが、僕たちの小学生のころ町には貸本屋さんがありました。貸本屋さん専門の漫画・小説が置いてあって大変に繁盛していました。同世代人が持っているこのレトロ感を狙ったのかしら。もちろん、この本は漫画ではなくて小説です。

 

 

ストーリー自体は、まあ平板なものです。 本のタイトルの通り「ある受験生カップルの軌跡」=青春純愛小説です。主人公は、著者ご本人のように感じられますが、とにかく、秀才中の秀才で、中学時代から高校入試、更には、大学=東大入試を見据えての物事の組み立て方が凄いの一言。同時代にこんな風に考えながら中学・高校時代を生きていた同世代のヤツがいたのだなあ、と感心しました。受験を軸にした「カップルの軌跡」も小説としてそれなりに面白いのですが、やはり、同世代人としては、その時々の出来事が取り上げられているのが何んとも懐かしい。ちなみに、この主人公は、高校時代からススキノで飲む習慣があったそうです。これには完敗・脱帽です。

 

1963年11月22日、米国テキサス州ダラスでのケネデイ大統領暗殺。1964年10月、東京オリンピック。1969年7月、アポロ11号、人類初めての月面着陸。1970年、大阪万博。1973年10月第四次中東戦争=第一次オイルショック、1974年にかけての日本での狂乱物価、等々。これらの出来事がカップルの軌跡と共に記載されており、僕自身の同じ年の記憶を辿りながら忘れていたことも思い出して懐かしく、切なく、また、楽しくなりました。(全くの余談ですが、僕の長男の誕生日が11月22日です。)

  

ご存知「愛と死を見つめて」。マコとミコの二人の文通を書籍化したもの。映画は、1964年9月公開。吉永小百合さん、浜田光男さんが主演。当時の中学・高校生は皆涙して感激した。小百合ちゃんが国民的なスターになった作品の一つかと思いますが、この本の主人公の見方が面白い。「マコさんはこの本がベストセラーになって大金を手にした。まだ若いのであるから、いつまでも、亡くなってしまったミコさんを引きずらないほうが良いと思う。」てなことをカップルの会話のなかで話している。ナント冷静な。当時の僕とは大違いだ。

 

この本には出てこなかったと思いますが、僕の学校で「堀江謙一太平洋ひとりぼっち』」という映画(1963年の公開)を校内で上映して生徒に感想文を書かせたことがありました。大多数は「困難を克服してやり遂げた、凄い日本人だ!あっぱれ!」と称賛したものでしたが、一人だけ「失敗して救助を求めるケースとか、その場合は世間に迷惑をかけていまう、また、親兄弟の心配ぶり等々を本当に充分に考えたのかしら」と批判的な感想を述べた生徒がいました。当時、”ほかの大多数の当たり前の感想とは異なる意見を持って、それを堂々と主張している面白いヤツがいるなあ”と感心しました。「愛と死をみつめて」のクダリで何故こんなことを思い出したのか不思議ですが何かにつけて懐かしい事々でした。

 

「愛と死を見つめて」とか「太平洋ひとりぼっち」とか、「東大入試中止」と一緒で今では知らない方の方が多いのでしょうね。

 

 

 後日、会社の同期会のネットワークで、僕たちの会社の同期の一人が、この本の著者と高校の同期生、同じテニス部で一緒に活動をしていたことが分かりました。著者さんは最近もお元気にススキノで飲んでいらっしゃるようです。世の中、広いようで狭いものです。とにかく、この年になると元気にオサケを楽しめることに感謝ですね。1950年生れの大坂谷さんの益々のご活躍にエールを送りたいと思います。

 

 

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 平和公園ウオーキング・続き。青空の下、ユーカリの木。東山動物園のコアラのためのユーカリの植林のはずです。古い枝をいったん落として新しい枝・葉の成長を促している。晴天。平日の午後ですが、結構、散歩・ウオーキング・ジョギングしている方が沢山いらっしゃいました。はい、やはりお年寄りの方が多いです。

 

 

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同じく平和公園。青空を撮るときに電線、鉄塔が視野に入らないことは良いことだと思います。猫洞池の近くの芝生広場の木。公園に至る街並みにはハナミズキの花が咲いています。ツツジはもうピークを過ぎつつあるのかなあ。あっという間に梅雨、アジサイの時節になるのでしょうね。