クルルのおじさん 料理を楽しむ

沖縄=ゴーヤチャンプルー

前回に続き『英国一家、日本を食べる』を再読して面白かったクダリの紹介です。以前、読んだ時にはそれ程記憶に残らなかったのに、今回、読み直してみると結構、面白いと思ってしまいました。僕が如何にいい加減に本を読んでいるのか分かってしまって恥ずかしく思いますが・・。

 

 沖縄は、かつて、長寿県ナンバーワンでありました。最近では肥満の増加と共に、成人病疾患が増加しているようです。一番の理由は、かつての沖縄伝統料理(=健康に最適な料理)中心の生活が大きく変わり、アメリカ風食生活に転換してしまったことと指摘されています。ゴーヤチャンプルーは、日本の各地では沖縄の健康食としてすっかり有名になってしまったのに、肝心の地元では相対的に沖縄料理を食べなくなっているのでしょうね。

 

英国一家のマイケル・ブースさん。沖縄も訪問しています。日本滞在100日間の間によくぞこれだけ精力的に全国を駆け巡ったものだと感心します。沖縄についての著者マイケルの関心は、沖縄が不老長寿の島・健康な島・長生き出来る秘密がある場所と聞き及んでいるところから来ています。

前回、記載した通り英国一家が来日したのは、2007年8月末。彼は、35歳(のはずです⇒註)。この年齢で彼は「日に何度か死について考える。自分の死という惨たらしい現実と格闘して」生きていたそうです。「短くても充実した人生なんてお断りだ。70歳どころか、100歳過ぎまで生き延びたい。」という強い願望を持っている。沖縄についての章のタイトルも「不死身でいたい?---沖縄」となっています。

沖縄に対する思い入れは大変なモノがあったようで「沖縄の人たちは、永遠の命の秘訣をしっているーーそれはオーバーだとしても、少なくとも、年齢が3桁になるまで健康で活動的に生きられる秘訣は知っている」と思い込んでいます。「沖縄の人たちは何世紀も前から、もしかしたら何千年も前から、健康的な暮らしをしてきたと言われている。紀元前3世紀に沖縄と貿易を始めていた中国では、沖縄のことを『不死の人の国』と呼んでいた」とか。

 

沖縄の人の長寿に関する研究の第一人者である博士(沖縄在住のカナダ人です)を博士の自宅に訪ねて面談しています。

博士がマイケルに長寿の秘密を解説しますが、この時にどういう訳かゴーヤーチャンプルーを食べながら話をしています。暗示的なシーンです。「沖縄の人は、塩分をあまり摂りません。・・・平均で週に3回は魚を食べます。全粒の穀物、野菜、大豆食品もたっぷりと摂ります。そして、豆腐や昆布は、世界の誰よりも多く食べています。タウリンを豊富に含むイカやタコもたくさん食べています」と。まるで健康のための教科書そのものの食生活の様子が紹介されています。沖縄のサツマイモ=紅芋の評価もすこぶる高い。そして、この博士の認識として面白いのが「口に入れないモノも重要である」と。つまり「食べ過ぎないことが長生きの鍵になる」。

マイケルも食べ過ぎない習慣が大切であることをよく理解しています。「台風、病気、貧困、地理的な孤立によって、沖縄の人たちはたび重なる飢饉に耐えてきた。食べる量を少なくすることは、沖縄の人々の精神はもちろん、おそらく遺伝子にも、深く刻まれている」、「そういう(食生活)の哲学を表す『腹八分』という言葉まであるくらいだ」と。筆者マイケル自身は、食べること大好き人間ですが、この「腹八分」という自制心については100%共鳴しているようで、「人類の進化の過程で、大勢の人間が食物を過剰に摂取するようになったのは、せいぜい20世紀になってからのことで、僕らの肉体はもっとずっと少ない量の食事にまだ順応出来る」、「日頃から『腹八分』を実行するくらいのちょっとした自制心は誰だって持ち合わせているはずだと僕は思う」と極めて真っ当な見解を述べています。

 

筆者の沖縄に対する思い込みは訪日前の調査によるものかと思われますが、その資料がやや古い年代のものであったのかもしれません。博士との面談の際も「沖縄の人が長寿である時代は終わりを告げそうだ」と指摘されています。筆者自身も「アメリカのファーストフードに馴染み・・・肉類だって、親の世代の倍ほど食べている。かつて痩せていた沖縄の人は、この数十年で、日本で一番BMIが高い集団になってしまった」と嘆いています。

 

 博士の研究では、沖縄の高齢者が健康なのは4つの要因、すなわち、食事、運動、心を満たす信仰があること、友情や社会支援システムなどの社会心理的な要素、これらがバランスが良く取れていることが高齢者が活動的に、自立して暮らし、社会に貢献していることの背景にあるとのことです。

 

 (註)マイケル君が当時35歳と推測するのは、この章の最初に「ウインブルドンでボルグがマッケンローに負けた、確か9歳の時と記憶する」との記述があるからです。ボルグが6連覇を逃したのが1981年。その時9歳=1972年生れ。この来日が2007年ですから35歳と。男性の著者の場合、生年月日を記載する方が多いですが彼の本には記載がありませんでした。これも彼独特のシャレの世界ですかね。

 

 

かつての県別の平均寿命の推移を調べてみましたら、1980年、1985年の調査結果では、男女ともに沖縄が全国no.1。その後、男は1990年代に4-5位に、2000年代に入ると更に急落して25-29位に、2010年には30位。一方女子は、1975年調査再開から2005年までNO.1を維持。2010年は3位になっている由。人口10万人あたりの100歳以上の高齢者数でも、沖縄は2009年まではno.1であったものの、その後低下し2017年度では全国10位となっているらしいです。データの出所は不案内です。

 

本年7月20日付けの日経新聞の記事では、「1990年から2015年までの25年間で、日本の平均寿命は4.2歳延びた。県別に見ると、平均寿命が最も長い県と短い県の差が最大3.1歳に広がっている」と。東京大学の研究発表です。これによると2015年の沖縄の平均寿命は81.9歳で全国46位、健康寿命も72.9歳で同46位となっています。これは厚生省などのデータを使って分析したものと記載がありました。データの整合性は不案内のままですが、沖縄=長寿県というのは完全に昔話になってしまったということですかねえ。

 

 

沖縄には仕事の関係で年に何回も訪問しています。あまり余裕のある出張ではありません。この11月には家族で旅行する予定をしております。おばあちゃん=僕のかみさんのお母様と一緒に行きます。少しはのんびり出来るかと、そして、ひょっとするとかつての長寿の秘訣に接することが出来るかもと考えるようになりました。またその時には沖縄訪問記を書いてみたいと思っています。

 

ゴーヤチャンプルー。実は僕の得意の料理の一つなのです。料理して写真を載せようかと思ったのですが、残念、時季を逸しました。11月に訪問時に本場のゴーヤチャンプルーを楽しめれば嬉しいです。

チャンプルーというのは沖縄の方言で、混ぜこぜ・ごちゃまぜの意味とか。いろいろな食材と豆腐とを炒めた料理。あくまでも豆腐がベースと教わりました。ゴーヤチャンプルーと言えば、ゴーヤをメインにしたチャンプルー。沖縄の固い豆腐=島豆腐がよく合います。レシピとして豆腐はmustと信じておりましたが、mustでは無く、ソーミンチャンプルー等、豆腐を加えなくともチャンプルーと呼ばれるモノもあると最近指摘をうけました。

また、チャンプルーは「ちゃんぽん」(長崎ちゃんぽんのちゃんぽん)の沖縄方言読みとの説もあるそうですが、僕は順序が逆ではないかと思っています。一方では、ネシア・マレー語のcampur(チャンプル=混ぜる、混ぜたモノの意とか)に由来しているとの説もあるそうですが、こちらの方が筋が通りそうだと感じます。

 

ゴーヤが無いからという訳ではありませんが、最近「黄身乗せナットドーフ(納豆豆腐)」 に凝ってます。かつて神田の居酒屋で酒のつまみによく食べました。今、考えてみても健康的ツマミno.1と思います。美味しく出来つつあるのですが写真を撮ると写り映えがしない(と言うよりも気持ち悪い)ので、また、改めて表現方法を工夫します。

天高く馬肥える秋を向かえて、「腹八分」よりも更に進んで「飢餓感を感じる健康法」、はたまた、今や死語になった「ひもじさに耐える健康法」が必要な年代になりつつあるのかと感じ始めている今日この頃です。

 

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 2017年10月1日撮影。碧南の工場、正門へのアプローチ。「クルル」マークを花壇に表現。今日は会社の社友会(OB/現役の家族懇親会)。会社・工場を見てもらってから、安城のデンパークでバーべキュー。腹 120%になります。自制心は何処にか。ヒモジイは日本では完全な死語になってしまったか。

 

同、碧南の工場で栽培しているサトウキビ畑。12月には収穫祭をやります。地元の子供たちにも参加してもらって。採れたてのキビ・ジュースが絶品です。

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