クルルのおじさん 料理を楽しむ

大阪=タコ焼き

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クルルのおじさんの「黄身乗っけナットドーフ」です。納豆が見えませんが、 ちりめんとおかかとネギの下に潜んでいます。これに日向の平兵衛酢ポン酢をかけて、ざあっと混ぜて頂きます。美味しそうに撮れました!?。10月15日撮影。

 

英国一家、日本を食べる』の三回目です。この本の構成を改めて見ますと、パリでの話(なぜ日本に行くことになったのか)から始まり、後は、日本全国を食べ回った話が続きます。東京の話が全6話、京都が5話、北海道が2話、大阪が2話、福岡と沖縄が1話づつ、それから、調理師学校の話が2話、そしてエピローグとなっています。100日間で、東京、横浜、北海道、京都、大阪、広島、福岡、そして、沖縄を巡った。長男クンは6歳、次男クンは4歳の可愛い盛りでありました。

どういう訳か、大阪の評価が随分と高い。訪日前の取材・調査で「著名なフランス人のレストラン批評家が”大阪は世界一エキサイテイングな食の街。世界のなかでも大阪は特に好きな食の街”だと言っている」とか、「ヨーロッパやアメリカのトップシェフたちが”インスピレーションを求めて訪ねる街として大阪”の名前を挙げている」とか、「大阪は(日本の)食の首都であるという評判が高まっている」とかめっぽう大阪を持ち上げた記載が多くでてきます。

筆者自身も「日本の都市のなかでは大阪を一番楽しみにして」わくわくする気持ちを抑えきれなかった由です。

大阪生まれの僕としては、何やらこそばゆい気持ち。一般的に、大阪を評する時は「どぎつい」という言葉に集約されると思います。そのドギツサが災いして他の都道府県の方々から揶揄されたり、凹まされたりしますが、全く、屁の河童。反骨精神が旺盛で、それが大阪のバイタリテイになっていると思います。逆に、あまり素直に褒められる経験が無いので、褒められたら逆に驚いて戸惑ってしまう。そんなに褒めても何も出ませんよ、と言ってみたくなります。

 

大阪編・その1.のタイトルは「世界最速のファストフード」。これは、回転ずしとインスタントラーメンのこと。どちらも1958年に大阪で開発された由、等々のことが記載されてますが、マイケル君のもっぱら関心は、タコ焼きとお好み焼き。道頓堀は、その心のふるさと、道頓堀食べ歩き記がガイジンの目線で面白く描かれています。

また、「辻静雄が・・・マイケル君がその著書”Japanese Cooking; a simple art"を読んだことが、そもそも日本に行きたあーい!と一念発起した原点なのですが・・・日本料理において、大阪、あるいは関西を重視している割には、その著書のなかで、タコ焼きにもお好み焼きにも全く触れていない」ことにツッコミを入れてます。

マイケル君自身、「屋台の食べ物は、まともに取り上げるほどのものじゃないと(辻静雄は)思っていたのかもしれない」と言ってますが、これも面白い視点。彼は、お好み焼きに惚れ込んでいて、「世界に広まる次の日本の料理のトレンドはお好み焼きと今でも思っている」そうです。

 

ここで、ようやく分かりました。「マイケル君、あんた、ホンマはB級グルメ人間なんやろ!」。

 

大阪関西人、関西コナモン文化圏の人間にとっては、タコ焼きとお好み焼きはソウルフードそのものかと心の底から思います。

僕にとって、人生で初めて、それも自分一人だけで買い物をしたのがタコ焼きでした。10円のタコ焼き。幼稚園の時だったと思います。僕の家ではお小遣いを子供には与えてくれませんでした。中学生、いやひょっとすると高校生の時も余分な小遣いは貰えなかったように思います。お正月のお年玉等々を頂いた時も、すぐに没収されて預金されていました。子供に小遣い、小銭を持たせてはいけない、というのが我が家訓にあったのかしら!?。

それなのに、何故、幼稚園児の僕が一人でタコ焼きを買いに行くことになったのか。今回、イロイロ考えてみた結果、実は、おばちゃん、おじいちゃんがタコ焼き大好き人間だったのではと思い当たりました。おばあちゃんは、自分で買いに行くのが恥ずかしいので=プライドが高いから、孫をダシにしてタコ焼きを買いに走らせたのではないかと。

僕は当時、大変な恥ずかしがり屋さん。大人の人に話かけることなど全く出来なかった。ましてや、一人で買い物にいくなんで怖くて出来なかったように思います。タコ焼きを食べたいのに、いつもおばあちゃんに駄々を捏ねていました。それが、いざ出かけてみると、お店のおばちゃんの優しさに一安心。さらに、いつもオマケまで頂きました。一個だけだったけど。10円で随分沢山あったように思います。家に飛んで帰り、家内の溶接工場で仕事をしていたおじいちゃんの休憩時間に、おばあちゃんと一緒に三人で食べました。一人で買い物に行ったことを自慢して「おまけの一個は僕のもんや」と誇らしげに自己主張していたような。お母ちゃんは、その頃、外で働いていました。兄貴は既に小学生であったのでしょう。いま思えば、このこと=タコ焼きを買って来て三人だけで食べていたことは、ひょっとすると三人だけの秘密であったのかも知れません。

タコは値段が高かったはずで、タコ焼き一個にタコが一かけ入っているかどうか不確かでありました。偶に大きなタコが入っていたら大喜びしていたように記憶します。

実は、策士のおばあちゃんが、恥ずかしがり屋で満足に人と話が出来ない孫を、タコ焼きを餌にして社会の荒波?の中に放り込んだのかも知れません。

  

愛知県知多半島沖に「タコの島」があります。10月14日・土曜日の日経「産直の旅」で紹介されてました。日間賀島。この辺りは、フグ、アナゴ、ワタリガニ等々魚介類の宝庫ですが、一番の名物がタコです。

半島の南端からフェリーで20分ほどで島に到着します。フェリーに少し乗るだけで都会の喧騒から完全に離れて、のんびりとした風情を楽しめます。圧巻はタコの丸ゆで。体長が20-30㎝のタコが丸々茹でられて出てきます。豪快にハサミで切って食べる。絶品です。

名古屋からも近いので何回も行きました。地方の食通のお客さんにわざわざ足を運んでもらったり、大学のゼミの同期会を日間賀島の旅館でやったり。口の肥えている方々も、このタコの丸ゆでには感激してくれます。幸か不幸か、僕が見た限りでは、日間賀島にタコ焼き屋さんは無かったように思います。

 

マイケル君ご一家にも、是非、足を運んでもらいたかったと思いまが、イギリス人、ヨーロッパ人がタコの丸ゆでを見たら、どんな反応をしますやら。卒倒するかしら・・。残念ながら、マイケル君ご一家は、日間賀島どころか名古屋にも来てくれませんでした。

 

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 10月14日・土曜日、日経「日間賀島」の記事。(上の写真)タコの干物作り体験が出来るそうです。(下の写真)名物、タコの丸ゆで。タコしゃぶも楽しめます。

 

追記:マイケル君の名誉のために補足しますと、大阪編・その2.ではちゃんと伝統調味料である”味噌蔵”を訪ねたことが記載されています。単なるB級グルメ食べ歩きおじさんではないのです。ただし、味噌蔵の話を書きたいのであれば、それこそ、大阪でなく『八丁味噌』だと思います。大阪に、昔ながらの味噌造りをしているイギリス人のおじさんがいたからのようですが、それにしても、残念なことをしたものだと思います。

マイケル君、中部を素通りするなんて・・・。僕が中部地域の行政の責任者であれば、マイケル君に公開質問状「君はなぜ中部に来なかったのか?」を出してますね。