クルルのおじさん 料理を楽しむ

沖縄=ゴーヤチャンプルー、その2.

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沖縄グラスで焼酎を飲みながら(泡盛ではない、スミマセン)。もちろん、日向の平兵衛酢を入れて。2017年10月23日撮影。

 

 

『沖縄=ゴーヤチャンプルー』で書きました通り、 11月におばあちゃんと一緒に沖縄を旅行します。僕のカミさんのお母様。94歳。杖は使いますが良く歩きます。食事もゆっくりですが僕たちとほぼ同量食べます。今回の旅行のメンバーは、娘二人=昔のムスメ=僕のカミさんとお姉さん、それにおばあちゃんの弟さんのご長男。僕を含めて平均年齢は四捨五入すると70歳。おばあちゃんのお兄さんは軍人さんで沖縄で戦死されています。今まで何回も足を運ぼうとするたびに機会を逸していて、今回が、おばあちゃんにとっては初めての慰霊の旅です。おばあちゃんを案内するのに、ちょっとは沖縄の知識を得ておかねばと俄か仕込みですが沖縄の本を改めて読んでみました。さすがに英国一家のマイケル君の本の知識だけで沖縄を語るのは申し訳ないような。確か初めて沖縄に出張した時に那覇空港の本屋で地元を紹介する本が並んでいて、その中の一冊を買った記憶が。本棚を探したら見つかりました。

 

『沖縄の神と食の文化』監修、赤嶺正信さん。青春出版社。2003年4月第一刷。僕が買ったのは、多分、2004年だと思います。例によってザアっと読んだだけ。何も頭に残っていません。監修の赤嶺さんは、1954年沖縄生れ、琉球大学の文学部教授、民俗学専攻。監修ですから、ご自身が書かれた訳では無いと思いますが、地元生まれ・地元大学の民族学専攻の教授の方が監修をされていれば、いい加減なことは書いてないであろうと思って買った記憶があります。各地の空港、駅の本屋さんには、その土地の歴史、風習、文化に関する本を集めたコーナーがあります。その場所でしか手に取ってみる機会が少ない本。偶に面白いモノに当たります。読み返してみて、この本も結構アタリであったことに今頃気づきました。

  

 沖縄の文化を語るときには「女性優位と男系原理」という表現が使われることがあるそうです。沖縄では、家の継承は男系主義。村落・字を構成するのは、門中と呼ばれる親族集団ですが、これは全くの男系社会。先祖の位牌を祀る権利は長男だけ。それを継承することで父系血筋の一環性を厳守しているとのことです。

一方、祭祀を司る役割は女性が卓越している。女性たちにより祭祀が営まれる御嶽は、原則的には男子禁制になっている由。御嶽というのは、各村落に少なくとも一つは存在する聖地で、村落の守護神が祀られており、その村落の祭祀が執り行われる祭場のこと。丘の上など高台の緑濃い森の中にあることが多いそうです。門中の祭祀は女性の司祭者が中心になって執り行われる訳ですが、女性は生家の司祭になることはあっても、婚家の司祭になることはないとのことです。

 

「日本では一般的に”結婚したら婚家の人間”という意識が強いと思うが、沖縄の場合は、女性が結婚したあともその生家とのつながりが強い。生家あるいは生家の属する門中の成員権を保持する傾向にある」とか。門中は、男系原理ながら祭祀における女性優位が大きく影響しているような印象を受けました。

 

大変な逸話が紹介されています。沖縄のある島の男のお話。ある時、自分の姉妹と自分の妻と合計四人で船に乗った。運悪くその船が難破。男は必至で妻を助けたが、姉妹は溺死してしまった。島に戻った男は人々から非難された。どちらかを助けるのであれば、姉妹を優先すべきと。「妻はまた捜せば見つかるが、姉妹はそういう訳にはいかない」。一理あるかと思うもののなんとも悍ましいお言葉。"この話は沖縄のしきたりの強さ、その一方では夫婦の絆の構造的な弱さを示唆している、これが、沖縄が離婚率全国一位になっている背景にあるのでは"との指摘が記載されていました。

 

 

 マイケル君ではありませんが、11月の旅行で沖縄の長寿の秘訣を垣間見ることが出来れば面白いなあと楽しみにしています。もちろん、この本にも「長寿の島の四大食材」が紹介されています。そもそも沖縄では、食事のことを「ヌイグスイ」とか「クスイムン」とかいうそうです。ヌイグスイは「命の薬」という意味、クスイムンは「薬になるもの」だそうです。口にするものはすべて血や肉になり、体の健康を作るという考え方。中国の医食同源の影響を早くから受けており、体にいいものを食べる習慣が受け継がれていると。

 

四大食材その1.豚:沖縄では「豚は鳴き声以外、余すところなく全てを食べ尽くす」と言われるそうです(これは沖縄の名言なのか、中国から伝わった言葉なのか、やや気になるところですが)。豚は元々中国から入ってきたそうですが、大量の飼料を必要とする豚は飼育することが難しい、大変に貴重な食材でありました。貴重な優れた効用を持つ豚を残さず全て始末して食べ尽くすというのは先人の知恵なのでしょう。17世紀にこれも中国から持ち返ったサツマイモが普及して豚の飼育に繋がったそうです。公設市場の食肉店には豚の各部位が豪快に置かれているそうで、これはチラッとは覗いてみたいなあと思います。

 

その2.豆腐:沖縄豆腐、島豆腐。「食品成分表のなかでも、木綿豆腐と区別され”沖縄豆腐”と表記されている」そうです。ご存知、ゴーヤチャンプルーはこの沖縄豆腐が当然よく合います。木綿豆腐よりも、ずっと、しっかりした豆腐です。大好きです。「豆腐よう」も大好きです。島豆腐を発酵させた発酵食品。紅麹で発酵させたものと聞きました。チーズのような珍味ですね。これは酒の肴によし、これも大好きです。

 

その3.昆布:「沖縄は昆布の消費量が全国一」との記載がありますが今でもそうなのかチト心配です。沖縄で昆布が採れる訳では無いのに・・・これは交易によるもの、とのことです。18世紀後半だそうですが、薩摩商人が琉球の黒糖を対価として、北前船により蝦夷から琉球に運ばれて昆布を入手。それを進貢貿易により中国に輸出。1820年代には琉球から中国への積み荷の何んと80%を昆布が占めていたそうです。同時に地場の食生活にも大きく影響を与え、豚肉との相性の良さもあり琉球料理に欠かせない食材となったと。

 

その4.サツマイモ:「薩摩イモ」と言いますが、やはり、中国から琉球に入り、それから薩摩に渡り、そして「サツマイモ」と言う名前で全国に広がったと。薩摩では「琉球イモ」乃至は「唐イモ」と呼ばれていたとか。「沖縄は概して耕地が狭く土地も痩せている。年に何度も台風が来襲、逆に旱魃の被害も。農民たちは度重なる飢饉に苦しんでいた。1605年、中国からサツマイモ(甘藷)を持ち帰り栽培を開始。狭い畑でも効率よく栽培出来て、また、台風、旱魃にも比較的強かった。サツマイモを導入してから庶民の栄養状態が良くなり、人口が著しく増加」したそうです。「同時に豚、牛の飼料となり、養豚が盛んに。豚料理の豊富な沖縄料理の発展に影響を与えた」と。

 

 

 いよいよ、料理です。「沖縄そば」、「ポーク」、「タコライス」が紹介されています(ゴーヤチャンプルーは出てきません)。

 

沖縄料理その1.沖縄そば:意外と沖縄そばの歴史は新しいそうです。明治35年の「支那そばや開業」の広告が沖縄初のそば屋だとか。また、ご存知の方はご存知の通り「沖縄のソバは蕎麦ではない。蕎麦粉は一切使わない、小麦粉のみで作られている」。

「ソーキそば」、大好きです。豚のあばら骨の部分を煮込んだものをトッピングに入れてあります。

 

その2.ポーク=ポークランチョンミート、缶詰めです。これはてっきり沖縄産と思っていました。この本が執筆された時点では「この缶詰はアメリカ、デンマーク製が中心で、日本に輸入される9割が沖縄で消費されている。かつて米軍物資が民間に払い下げされた配給物資の一つであり、配給が終了後も安価に手に入る保存食であったので、庶民の食生活に取り入れられるようになった」。

「ポーク玉子おにぎり」、これも大好きです。ソーキそばとポーク玉子おにぎり。沖縄で初めてゴルフをした時に、朝食にソーキそば、途中の軽食にホーク玉子おにぎりを初めて食べました。とても美味しく頂きました。

 

その3.タコライス。最近では沖縄発祥の食べ物としてすっかり有名になりましたが、メキシコ料理のタコスの具をライスの上に山盛りに載せたもの。昔は笑い話のネタになっていたようにも思いますが、タコは入っていません。僕は,それほどキーンではありません(どうも僕の脳はチャーハンの方が旨いと思い込んでいるらしい)。

 

おばあちゃんには、沖縄宮廷料理を紹介しようかとおもっていたのですが、やっぱ、僕もB級グルメおじさんなのか。この本には結局「ゴーヤチャンプルー」のことは紹介されていませんでした。当たり前すぎるからでしょうか。その代わり「異国の文化を受け入れ、さらに沖縄独自のものにアレンジしてしまう」=「チャンプルー精神」という言い方をされています。「チャンプルー精神が生んだ”タコライス”」とか。「チャンプルー」にはこういうニュアンスがあるのですかね。

 

 

ゴーヤチャンプルー、「きょうの料理」で見たはずだと、これも本棚を捜してみました。2008年7月号に高城順子さんの「ゴーヤーのにんにくみそチャンプルー」が掲載されており、僕も当時ちゃんと料理していました。チャンプルーは、豆腐がmustと信じていた僕は、わざわざこのレシピに豆腐を加えて料理していました。「チャンプルーとは豆腐とゴーヤである。高城順子、ボケたのか!」なんて不遜な手書きのメモが残っていました。いやはや、思い込みとは恐ろしいことで。高城先生、スミマセンでした。

 

 

「太陽の棘」、原田マハ著、文春文庫。本の目利き=読書の達人の先生に紹介頂いた本です。雨が続く週末にブラブラ本屋巡りをしていたら、目に留まったので即買い。2016年11月、第一刷即第二刷。初出は、別冊文芸春秋、2012年11月~2014年1月。戦後の沖縄をベースにした小説。いきなり主人公がゴーヤチャンプルーを食べるシーンが出てきて思わず笑ってしまいましたが、この本は、そんなに軽い本ではありませんでした。今度の旅行で、那覇にある沖縄県立博物館・美術館で「ニシムイ・コレクション」を見ることが出来れば、と思いました。

 

 今回は、沖縄のウンチクでした。長寿のおばあちゃんと一緒に沖縄のかつての長寿の秘訣に触れられるか、楽しい旅行をしてきたいと思っています。

 

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本文と全く脈絡がありませんが、金沢駅正面玄関。久しぶりに訪問。かつては鼓のモニュメントのみだったと思いますが、「鼓門」とそれを全体に被っている「もてなしドーム」が完成。日向市駅も立派だと思いますが、金沢駅は凄いですね。2017年10月17日撮影。