クルルのおじさん 料理を楽しむ

割烹『新』亭

3月中旬から神奈川の自宅に帰っています。行ったり来たりでは無くて、久しぶりに長い期間を自宅で過ごすことになりました。旅行の時の御供は「本」ですから、いつもの千種図書館で四五冊の本を借りました。移動時の新幹線の中、自宅でのんびり一人でいる時、外出してふと一人になった時、手元に面白い本があると楽しく時間を過ごせます。

ところが、今回借りた本はほとんどが”ハズレ”でした。ちょっとショックでした。本を借りる時は結構吟味して選んで注文しているのですが、今回はどの本も読了することが出来ませんでした。途中でギブアップ。

前回のブログで「反穀物の人類史」が面白かったこと、”飼い馴らし(domestication)という言葉に新鮮な印象を受けたことを記載しましたが、その後、イロイロ検索していたら『飼いならす』というタイトルの本がありました。本の帯には「世界を変えた10種の動植物」と記載されており、ほぼ同じ意味で使われていることが分かり楽しみにして借りてきました。400頁を超える大作であったので、これ一冊を読み切れるかどうかと思っていたのですが、結果は見事に空振り。最後まで読み切ることが出来ず、残念ながらこれも”ハズレ”の一冊になってしまいました。タイトルの「飼いならす」という言葉ですが、この本の原題は「Tamed」。著者はアリス・ロバーツさん、1973年イギリス生まれの人類学者さん、バーミンガム大学教授。原書は2017年、邦訳は2020年10月、第一刷。斎藤隆央訳、明石書房。英語の表現にも「domestication」と「Tamed」とイロイロとあることだけは理解出来ました。ニュアンスは少し異なっているようにも感じました。

 

図書館で借りた本とは別に、移動の時に駅の売店文藝春秋・4月特別号を買ったのですが、こちらがイロイロな記事が掲載されていて面白かったです。

石原慎太郎の絶筆である「死への道程」が掲載されていて、同時に芥川賞太陽の季節」の全文が掲載されていました。「ウクライナ戦争」緊急特集「驕れる中国とつきあう法」となっていますが、慎太郎特集号の様でもありました。毎月、文藝春秋は買って読んでいますが、今月号は図書館で借りた本が”ハズレ”であったので、余計に面白く読めたのかも知れません。

芥川賞太陽の季節」は選評も含めて当時=1956年(昭和31年)3月号の誌面がそのまま掲載されていました。復刻版です。字が小さくて難しい漢字が使われており読みにくいものではありましたが、当時を偲ばれるような気配が漂っているように感じ面白いと思いました。慎太郎の慎の字もりっしんべんに”眞”の字。受賞者略歴・本人の感想の欄に乗せられているご本人の写真もまさに「生意気な小僧」そのものの表情。

 

文藝春秋の巻頭には著名人の寄稿が掲載されていますが、この号の冒頭は藤原正彦さん。父親の新田次郎さんが直木賞を受賞された時の思い出が書かれていました。その時の芥川賞が「太陽の季節」。直木賞芥川賞の授賞式は同時にされるそうですが、その時、同席した慎太郎の印象を息子の藤原文彦さんが父親の新田次郎さんに聞いたそうです。返事は「生意気な小僧だよ」と。受賞の記念撮影の際には最年長の新田次郎さん、同じ直木賞の邸永漢さんが畏まっている中で、慎太郎は”長い両脚を左右に広げるだけ広げていた”由。慎太郎は当時、一橋大学に在学中でしたから、まさに生意気盛りであったのでしょう。というかそういうスタイルを意識してアピールしていたのでしょう。

 

掲載の「太陽の季節」を読んでみました。以前に読んだことがあったかどうか不案内でしたがストーリーは記憶に残っておりました。この年になって読み直したことになった訳ですが、敗戦後まだ10年の時の作品であることに改めて感心しました。昭和30年(1955年)当時、既に(限られた一部の若者であったと思いますが)日本にこんな自由奔放な(選者の一人である舟橋聖一さんの言葉を借りれば「『快楽』と素直にかつ正面から取り組んでいる」)若者の世界、があったことに驚きました。

 

 

今回のメインイベントは池袋のオオおばあちゃんとの食事会でした。名古屋の長男一家がほぼ一年振りに横浜・東京へ旅行するのに合わせて予定を組むことが出来ました。我々夫婦、子供たち家族が全員集合してオオおばあちゃんを囲んでの食事会となりました。オオおばあちゃんは今年99歳になります。益々お元気。孫の名前を間違うことも無く、曽孫ともスキンシップを楽しんでくれていました。いつもの中華レストランでコース料理を注文しましたが、ほぼ完食。お肉のお皿は長男に手伝ってもらったそうですが、自分が食べられなかったというよりは長男が食べ足らないことを心配して分け譲ったのではないかと推測しています。オオおじいちゃんのお墓参りもつつがなく行うことが出来ました。

 

 

NHK俳句です。僕の備忘録として書いています。お付き合い頂ければ嬉しいです。4月から新年度に入り選者の先生が全員交代します。旧年度の最後の番組、第四週はNHK俳句部。部長は塚地武雅さん、顧問先生は櫂未知子さん。部員は櫻井紗季さん。今週の兼題は「桜餅」。関東地方の「長明寺」、関西地方の「道明寺」が紹介されていました。宿題の中で「桜餅」の句です。

   午後三時家族揃ひて桜餅   塚地武雅

   顔見せぬ楽屋見舞いの桜餅   田中要次

両方ともにイイ感じの句ですね。いとうまい子さんの句、

   桜餅西と東に違いあり   いとうまい子

顧問先生から「そりゃあそうだろう」と指摘されていました。

それ以外に面白いと思った句です(いずれも9点を貰っていました)。

   巴里からの荷物届きし春の夕   塚地武雅

   すすきのに人より高き雪残る   田中要次

今週の入選句です。ほんわかしたのを二つほど。

   えぷろんを外すひと時桜餅

   三つ子の名すべて決まりて桜餅

今週の大賞です。

   制服がひかりを知る日さくらもち

「俳句、二歩めへ」のコーナー。「小さな旅へ」と称して、”俳句は身近な場所、近所の風景のどこにでも句材を求めることが出来ますよ”、という話でした(その通りと思うのですが、なかなか出来ないんですよねえ)。

   桜餅ふたつあがなふ神楽坂   櫂未知子

   白檀の香かぎたるや春の雨   櫻井紗季(香=「かざ」と読みます)

続いて「俳句ドリル」のコーナー。以下の〇を埋めて作句する。

   長閑なり〇〇〇〇〇〇も〇〇〇〇〇も

武雅さんと紗季さんが似たような捉え方をしていました。

   長閑なり鳥鳴く声も波音も   塚地武雅

   長閑なり竹の葉擦も鳴くこゑも   櫻井紗季(葉擦=はずれ)

紗季さん、お若いのに「香」とか「葉擦」とか味のある言葉の読み方を良くご存じなのに感心しました。

 

日経・俳壇、3月26日。黒田杏子選「今週もウクライナ問題を詠まれたご投句が圧倒的に多く、戦争終結を希うお気持ちにあふれた作品を頂いております」とのことです。いいなあと思った句です。

   人類の闘いは今日脚伸ぶ   藤宮安子(安=日カンムリに安です)

   反戦の歌声乗せて春疾風   清水治彦

 

 

今回の二番目のメインイベントです。久しぶりに「居酒屋ヒデさん」にお邪魔しました。

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いつもながら心の籠ったお料理。嬉しい限りです。なんと「本日の献立」が準備されていました。ヒデさんの手になるお品書き。いやあ、これはもう立派な割烹だあ。いいね!。

今年の1月25日のブログで「居酒屋・心音」のことを書きましたが、ピアノの先生ご夫妻宅での「初呑み会」のお品書きに触発されて筆を取ったそうです。こういう楽しいことが伝染するのは良いですねえ。

お昼から美味しいお酒を頂きすっかり気持ち良く酔うことが出来ました。

 

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ヒデさんパパが「お品書き」を書いているのを見て、アラタくんも筆を執ったそうです。アラタくん直筆の作品。自分の名前を漢字で書くのは初めてだったとか。毛筆も初めて。それにしては、筆のタッチが良い!大変にキレイな線が描けていると絶賛しています(爺バカです)。

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これからは、「居酒屋ヒデさん」改め、「割烹『新』亭」(あらたてい)ということにしましょうかね。

 

この翌週、おまけのビッグイベントが。アラタくんが一人お泊りに来てくれました。以前に、長女ママとアラタくんがお泊りに来たときに次女ママとタカト君、サクト君が食事に参加。その時に次女ママとサクト君は帰ったのにタカト君ひとりが残ってお泊りしたことがあったそうです(僕は名古屋にて不在でした)。タカト君がママが帰ったのに平気で一人残ってお泊りしたことに感心していたそうです。それ以来、”自分も一人お泊りをしたい”と思っていたと。居酒屋ヒデさんでの食事の時に、ヒデさんパパも了解して実現することになりました。

 

長女ママに連れてきてもらいました。お昼を食べてみんなで遊んで、夕方になり長女ママはお帰り。大きな声で「バイ、バアーイ」とお見送り、元気いっぱいです。その後はアラタくん一人に。ジジ、ババとの三人での夕食となりました。三人のテーブルでは「ママがいなくてチョット寂しい・・・、ママに会いたい・・・」と素直な言葉が出ました。「ママも僕がいなくて寂しがってるだろうね」とも。相手の気持ちを慮ることが出来るのは凄いなあ、と感心しました。大好きなお寿司を食べたらまたいつも通りの元気なアラタくんになりました。一安心でした。ちなみに、アラタくんは我々のことを○○さん、○〇さんとファーストネイムで呼んでくれます(タカトくんも小雪ちゃんもです)。カミさんが初孫のタカトくんの誕生以来「おばあちゃんとは呼ばせない」方針を貫いているから。孫がジジ、ババとの会話が出来る年代になるとこの呼び方は結構、良いもんだわい、と思うようになっています(またまた爺バカです)。

翌日のお昼は僕が得意のチャーハンとスパニッシュオムレツを料理しました。お迎えに来た長女ママとも感激の再会!、みんな美味しいと言って沢山食べてくれました。嬉しい限りです。アラタくんもまた新しい楽しい経験が出来たことでしょう。

 

 

まん延防止措置が排除された後も感染者数は下げ止まり乃至は反転の兆しが出てきています。皆さま、引き続きくれぐれもご自愛くださいませ。